実質的に同じ運用をしているファンドであるにもかかわらず、取り扱い販売会社の違いなどによって信託報酬の水準にバラつきがみられるという投資信託の「一物多価」問題は、「仕方のないこと」として投信業界で長年、黙認されてきたきらいがある。

前回(業界のタブー? 同じモノでも値段が違う、投資信託の「一物多価」問題)、みずほフィナンシャルグループが取り扱うインデックスファンドについて取り上げた際、仕上がりの信託報酬率こそ統一されたが、この中の販売会社取り分(代行報酬)の水準に差が残っていることを指摘した。では、アクティブファンドはどうか。今回はアクティブファンドの「一物多価」問題について掘り下げていくこととする。

実質的に同じ運用でも信託報酬が異なる事実

結論を先に言ってしまうと、インデックスファンドよりもアクティブファンドのほうが「一物多価」問題の解消に向けた道のりは遠いと思われる。というのも、アクティブファンドの場合、同一のマザーファンドで運用を行う、いわゆる「実質的に同じ運用をしているファンド」の紐づけが難しいためだ。

以下に3つのケースを挙げ、説明していく。

【ケース1】ピクテ投信投資顧問
A) ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド(3ヵ月決算型)
B) iTrust世界株式
マザーファンド名:ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・マザーファンド

【ケース2】日興アセットマネジメント
A) 利益還元成長株オープン
B) 年金積立 Jグロース
マザーファンド名:Jグロース マザーファンド

【パターン3】キャピタル・インターナショナル
A) キャピタル世界株式ファンド
B) キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)
マザーファンド名:キャピタル世界株式マザーファンド

上記3つのケース全てに共通しているのは、Aに挙げたファンドよりもBに挙げたファンドのほうが後発で、かつ実質的な信託報酬が低いということ。決算回数の違いなどはあるが、同一のマザーファンドで「実質的に同じ運用」をしている。つまり、「一物多価」問題が生じている。しかし、だからといって運用会社を一方的に責めるのは早計だ。もう少し詳しく見ていこう。

まず、ケース1のピクテ投信投資顧問の場合、Aの「ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド(3ヵ月決算型)」の設定は2007年5月。設定当初はいわゆる対面の販売会社での展開が中心だったが、現在はオンラインを含む幅広い販売網で取り扱われている。

対してBの「iTrust」は、オンライン専用のアクティブファンドシリーズとして同社が2016年から展開している銘柄である。元来、同じ販売会社で取り扱われることが想定されていなかった2つの銘柄が、結果的にネット証券などでは並列されているため、「一物多価」問題が生じているというわけだ。なお、ピクテに限らず、オンライン専用が後発として設定されるケースは多い。

また、ケース2の日興アセットマネジメントと、ケース3のキャピタル・インターナショナルの場合、後発のBの銘柄はいずれもつみたてNISAの適格ファンドとなっている。

日興アセットの「年金積立 Jグロース」は、もともと確定拠出型年金専用だったものが2007年より一般向けに販売され、2018年のつみたてNISA制度開始当初から適格ファンドとして展開されている。キャピタル・インターナショナルの「キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)」も、2016年に確定拠出年金向けとして設定され、今年9月に名称を変更するとともにつみたてNISAの適格商品として届出がなされた。なお、「年金積立 Jグロース」は一般NISAや課税口座でも購入可能だが、「キャピタル世界株式ファンド」はつみたてNISA以外では購入できない。