大和総研が11月30日に作成したレポート「『日本型』金融資産格差を読み解く~日本で心配されるのは金融資産ゼロ世帯の増加」は、経済的に貧しくなりつつある日本の側面を表すものとして一読する価値があります。

当初所得の格差を示す「ジニ係数」は悪化傾向

一般的に「格差」という場合、収入やと所得というフローの面で議論されることが多いのですが、このレポートは金融資産、つまりストック面でも格差が広がっていることを指摘しています。

一般的に所得格差について議論する場合、所得格差を示す「ジニ係数」という数字が用いられます。ジニ係数は0から1の間で推移するもので、構成員すべての所得が同じで格差が全くない状態が「0」、逆に構成員のうちたった1人がすべての所得を独占する状態が「1」になります。つまり1に近づくほど所得格差が大きく、0に近づくほど所得格差が小さいと考えられます。

日本の所得格差については、厚生労働省が3年に1度の頻度で行っている「所得再分配調査」によって算出されています。2020年が直近の調査年でしたが、この年はコロナ禍の影響で調査が実施されなかったため、最新の数字は2017年のものになります。

ジニ係数は「当初所得」と「再分配所得」に分けられます。当初所得は雇用者所得、事業所得、財産所得、雑所得、仕送りや企業年金などの私的給付を合計したもので、税金や社会保険料を控除する前の所得のことです。この当初所得のジニ係数は1981年以降、上昇傾向にあり、2017年は0.5594でした。

これに対して再分配所得は、前述した当初所得から税金や社会保険料を控除し、そこに社会保障給付を加えたものです。つまり高所得者ほど税金や社会保険料の負担を重くすることで、低所得者との格差を調整した後の所得という意味です。この再分配所得のジニ係数が、2017年は0.3721になります。この数字は2005年をピークにして若干低下傾向をたどり、直近調査年である2017年に至っています。

今回、大和総研が発表したレポートは、所得面の格差ではなく、皆さんが保有している金融資産の格差を調査したものです。この金融資産の格差を表すものとして「金融資産ジニ係数」という数字が用いられています。所得格差のジニ係数と同様、1に近づくほど格差が大きいことを意味します。