実質GDPの成長鈍化が平均収入減少の引き金に

会社員の平均年収は、終戦直後の1950年が12万円。高度経済成長期に大きく伸びて、10年後の1960年には30万100円になりました。そしてその後もどんどん増え続け、株価がバブルピークを付けた1989年が402万4000円。そして1997年に467万3000円で最高額になりましたが、そこからは減少傾向をたどり、2019年のそれは436万4000円でした。全く収入が伸びていないのです。収入が増えなければ、それだけ貯蓄にお金を回すことが出来ないので、資産形成できない世帯が増えるのは当然のことでしょう。

では、なぜ収入がずっと増えないのかというと、国の成長力が失われているからです。

日本の実質GDP(実質)は、1989年が406兆7290万円。2021年の推計値が541兆4331億円ですから、この32年間で33.11%しか増えていません。ちなみに米国の場合、1989年が9兆1979億ドルで、2021年が19兆4827億ドルですから、同じ期間で111.81%増です。実質GDPは、その国が生み出した付加価値であり、その多寡は当然のことながら国民の豊かさに直結します。

今の日本の総理大臣は「分配なくして成長なし」などと言っていますが、その分配原資は、経済が成長しなければ捻出できません。一国のリーダーがまず考えるべきことは、所得移転で分配原資を確保することではなく、32年もの歳月をかけて、たったの33%しか成長できなかった国の経済を、いかに成長させるかということに尽きるのです。