徐々に広がる金融資産格差の実態

レポートでは1989年からの金融資産ジニ係数の推移をグラフで表示していますが、それによると2人以上世帯における金融資産ジニ係数は、1994年に若干下がったものの、そこから継続的に上昇傾向であることが確認できます。ちなみに金融資産ジニ係数は、総世帯で0.66、2人以上世帯では0.61です。同列で比較するのが正しいかどうかという問題はあるものの、前出の当初所得のジニ係数に比べて高いということは、所得というフローに比べ、保有金融資産というストックの格差が大きくなっていることを意味します。

同レポートには、2019年の全国家計構造調査のデータをもとにして作成した金融資産残高の分布が掲載されていますが、それによると平均値は1280万円。中央値は650万円ということでした。

言うまでもありませんが、平均値は保有している金融資産残高が大きな一部の人に引っ張られてしまいますから、統計的に最も回答数が多い水準を示す中央値を見た方が、より実感に近いはずです。つまり統計的に見ると、保有している金融資産の総額は650万円前後という人が多数を占めていることになります。

「650万円の金融資産では老後の生活がおぼつかない」と心配する声が上がるのはもっともでしょう。でも、このレポートでも懸念しているように、社会的に一番大きな問題点は、金融資産残高がゼロという世帯が10%を占めているということです。そのうえ、金融資産ゼロに比較的近い、保有金融資産残高100万円未満も含めると、その比率は23%にまで上昇します。恐らく、「宵越しの金を持たない」などと言う人はごく限られていて、大半の人は「将来に向けて貯蓄しなければ」と思っているはずですから、それでも保有金融資産がゼロか、100万円未満しかないというのは、貯蓄をしたくても出来ない事情があるからです。

「子供の教育費にお金がかかる」

「親の介護で仕事を辞めなければならなくなった」

「収入が少ない」

「無計画にお金を使ってしまう」

「身の程に合わない生活をしている」

いろいろ理由を挙げることは出来ると思いますが、最大の原因は収入が増えないからです。これは国税庁が発表している「民間給与実態統計調査」を見れば一目瞭然です。「無計画にお金を使ってしまう」あるいは「身の程に合わない生活をしている」という人たちは、自分の生活を根本から見直す必要がありますが、他の事情に関して言えば、収入さえ増えれば解決可能な問題です。