4割の中小企業はボーナスを支給しないという統計も
もちろんこのアンケート調査のサンプルがそのまま日本の全体像を表すものではないので、ある程度割り引いて見る必要はありますが、2021年冬のボーナスを支給すると答えた中小企業の割合は、全体の58.6%にとどまりました。逆に、支給しないと答えた中小企業は、41.4%にも上ります。
長期の傾向を見ると、冬季ボーナスを支給すると答えた企業の割合は、1998年時点では80%程度もあったのが、2021年はコロナ禍の影響が残っているとはいえ、58.6%です。しかも、支給する企業の割合は年々、低下傾向にあります。逆に「少額手当」と「全くなし」の割合が、年々増加傾向をたどっています。前出の労務行政研究所が行った「2021年冬のボーナス妥結額」の調査結果は、あくまでも東証1部上場企業208社からのものですから、中小企業の実態はさらに厳しいといっても過言ではありません。
ちなみに、労務行政研究所の調査結果によると、2021年冬のボーナス支給額は71万5553円ですが、大阪シティ信用金庫が行ったアンケート調査結果によると、冬のボーナスを「支給する」と答えた企業の1人あたり支給予定額(加重平均)は、28万7945円でした。支給されたとしても、東証1部上場企業と中小企業との間には、これだけの差があるのです。
そして、もうひとつ押さえておきたい事実があります。それは、国内企業の大半は中小企業だということです。少し古い数字になるのですが、独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が行った「平成28年経済センサス活動調査」によると、全企業数358万9333社のうち中小企業は357万8176社で実に99.7%を占めます。
とはいえ、大企業は企業数として少数でも、大勢の従業員を雇用していますから、従業員数という点では企業数以上の高い比率になります。ちなみに国内全従業員数4678万9995人のうち、中小企業で働いている従業員の数は3220万1032人ですから、率にすると68.8%を占めます。
日本国内で働いている人の約7割が中小企業の従業員であり、さきほどの大阪シティ信用金庫の調査によれば中小企業の41.4%は、この冬のボーナス支給がないということなので、恐らく日本全体で見ると、この冬のボーナスは支給されないという会社員が、かなり多いのではないかと推測できます。
これからボーナスシーズンが本格化していくなかで、「ボーナスの平均支給額は70万円前後」、「その使い道は〇〇〇〇」といった記事が、さまざまなメディアを通じて流れてくると思いますが、日本全体で見れば、恐らくそういう記事を読んで、うなずける人は恵まれた収入環境にあり、その一方でかなりの割合の人が、ボーナスの支給なしでこの冬を越さざるを得ないという厳しい状況に直面しているのが、現実の姿ではないでしょうか。
ローンを組むにしても、あるいはライフプランニングを考えるにしても、ボーナスを当て込んだ計画策定は、絵に描いた餅になる恐れがあるのです。