投資信託の資金流入が6年ぶりに好転
第一に、「日本の投資家動向」ということで、運用資産の規模などについてふれられています。この運用資産には個人が購入できる投資信託だけでなく、年金基金など機関投資家の運用資産も含まれているため、全体の運用受託額は2021年3月末で825兆円という巨額な水準に上っています。
このうち、広く一般投資家から資金を集める「公募投資信託」の増え方が著しく、2021年3月末までの1年間で45兆円も増加したと書かれています。このうちETFが23兆円で、大半が法人資金と考えられますが、個人が購入できる「その他の公募投信」の残高も22兆円増となり、6年ぶりに過去最高を更新したそうです。それだけ個人の間で投資信託への関心が高まってきたということなのでしょう。
では、どういう投資信託に資金が入ってきたのでしょうか。同レポートの第3章、「顧客別市場動向と商品戦略」を見ると、いくつか興味深いポイントがあります。
まず投資信託の資金流入が6年ぶりに好転した理由として、「分配型投信の残高が縮小し、平均分配率も低下したことにより資金流出の一つである分配の総額がピーク時の4割程度まで低下」したことが挙げられています。
かつて毎月分配型など定期分配型投資信託が個人の間で人気を博しましたが、そのブームも去り、代わりに定期分配型投資信託以外の投資信託のなかで、資金流入が続いているファンド群が現れたということです。
第二に、どのようなタイプの投資信託に資金流入が続いているのかというと、同レポートでは「長期投資を志向する人々の中で海外株式の投資比率を上げる動きが見られ始めている」と言及されているように、海外株式型で世界中の株式に分散投資するグローバル株式型や、北米株式型が人気化していると読み取れます。
そして第三の注目点ですが、インデックスなど指標に連動したファンドなど投資信託のパッシブ化が急速に進んでいることにも、同レポートは言及しています。「株式投信に占めるパッシブ投信の残高割合は15年3月には11.5%であったが、その後10%以上シェアを伸ばし、直近(21年9月)では22.0%にまで上昇している」ということでした。
ということは、今の投資信託の人気商品は、グローバルな株式市場に投資するパッシブ運用のファンドが主流、ということになりそうです。実際、「MSCIコクサイ・インデックス」や「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」、「FTSEデベロップト・オール・キャップ・インデックス」といった株価インデックスへの連動を目指したパッシブ運用のファンドが、つみたてNISAの対象ファンドにも取り上げられており、そこを通じて多くの資金が投資信託に流入しています。