運用サービスの劣化に?素直に喜べないパッシブ化の加速

ただ、パッシブ化の加速は、投資信託会社の収益にとってネガティブ要因になりかねません。同レポートでも「パッシブ投信の平均運用報酬額(信託報酬のうち運用会社取り分)は低下が著しい。アクティブ投信との比較では10年前には半分ほどの水準であったが、競争激化によりさらに低下し、直近では4分の1に低下している」と書かれています。

パッシブ運用のファンドは、確かに個人にとってはローコストでグローバル分散投資が出来るという点でメリットが大きいものの、肝心の運用サービスを提供している投資信託会社にとっては、収益面でデメリットが大きく、投資信託会社のなかには、パッシブ化の加速に懸念を抱いているところもあります。

投資信託というとコスト面に関心が集まりがちですが、コスト競争の行き過ぎは逆に運用サービスの劣化を招きかねません。投資信託会社と個人の間で納得できるコストの料率はどの程度なのかは、「投資信託」というプロダクトが今後、個人の資産運用において重要な位置づけになるにつれて、重要なテーマになっていくでしょう。

最後に、個人の資産運用とは直接関係ないのですが、同レポートでは「新たにローンチする10兆円の大学ファンドの概要」にもふれています。今、資産運用業界が最も注目しているもので、国内の科学技術振興に関わる国立研究開発法人「科学技術振興協会(JST)」が運用管理を担う公的基金のことです。2021年度中に長期運用を開始し、その運用益を競争力のある科学技術研究の環境整備や研究者の育成に充てていくというものですが、その長期運用がどのように行われるのかについては、長期の資産形成を検討している個人にとっても参考になるでしょう。

特に関心が高いと思われるポートフォリオの構成については、

・当面のポートフォリオはグローバル株式65%、グローバル債券35%

・原則としてパッシブ運用とアクティブ運用を組み合わせる

が挙げられています。他にも、マネジャー構成や運用期間の選定などについてもふれられていますが、ポートフォリオについてはこの2点に加え、オルタナティブ投資を組み入れることも可能としています。つまり長期の資産形成を行うためのポートフォリオは、分散投資が大事だということです。