適当に選んだiDeCoの投資信託に潜む、カントリーバイアスという罠
博美さんは1年前にiDeCoをスタートし、当初より、日本債券と日経平均連動型のインデックス型投資信託で運用してきました。この2つの投資信託を選んだ理由を聞いてみると「ネットで調べたらインデックス型が良いと書いてあったので」とのこと。しっかりご自身で調べられたのですね。
確かにインデックス型は初心者にとっては分かりやすいです。日経平均の情報はネットでもテレビでも毎日ニュースで流れますから、特に博美さんが選んだ日経平均連動型の投資信託なら、自分の資産状況を把握しやすいでしょう。
ただ、だからといってアクティブ型が悪いというわけではありません。アクティブ型には個性がありますから、その個性を理解する必要はありますが、その投資信託に込められた想いなどに共感できるならアクティブ型も選択肢に入るでしょう。優秀なアクティブ型の投資信託はたくさんありますから、最初から選択肢に入れないのはもったいないですね。一度目を向けてみてはいかがでしょうか。
ところで、気になるのは博美さんが保有する株式型の投資信託が日本を投資先とする商品のみであることです。博美さんは自分の資産が増えることを期待して投資されていると思いますが、資産が増える前提として「経済成長」があります。基本的には日本経済が成長すると博美さんの資産も増えていくイメージです。
では、ここで日本と世界のGDPを確認しましょう。下記は1995年から2020年の日本と世界の実質GDPを比較したグラフです。
GDPは経済の大きさを表しますが、注目したいのはグラフの動き方です。日本は、ほぼ横ばいで動きがないのに対して、世界のGDPは右肩上がりです。日本に住んでいる私たちとしては、日本を応援したいし、期待もしたいところですが、日本は低成長が続いています。
1995年には世界のGDPに占める日本の割合は約10%ありましたが、2019年には約6%まで低下しました。このような世界経済を見ると、経済成長を期待して投資をするなら日本だけでなく残り94%の世界に投資をしないと、もったいないと思いませんか。
とはいえ、博美さんのように日本をメインに運用商品を選んでいる人は少なくありません。自国の資産をたくさん持つ現象を「ホームバイアス」と言います。博美さんはひょっとしたら、「海外に投資するのはなんだか怖い、日本に投資をした方が安心」と感じているのかもしれません。
しかし「海外への投資が怖い」に明確な根拠はありません。むしろ分散投資せず、日本集中投資の方が、よほどリスクが高いです。自国なら安心と思ってしまう心理的影響は大いに理解できるものの、世界経済での日本の位置づけを見ると、世界に目を向ける必要はありそうです。博美さんご自身もアマゾンを利用するでしょうし、iPhoneやiPadを使ったことはあるでしょう。韓国コスメも大人気ですよね。こんな風に身近なところに世界はたくさんあります。