原油高なのに、なぜか下落し続ける日本の消費者物価指数

ガソリンの小売価格は、原油価格の値動きが比較的ストレートに反映されるため、多くの消費者が意識しやすいのですが、それ以外の物価は、まだそれほど大きく上昇していません。総務省が発表した2021年8月までの消費者物価指数によると、すべての商品を総合した「総合」指数を対前年同月比で見ると、2021年5月が▲0.8%、6月が▲0.5%、7月が▲0.3%、8月が▲0.4%です。消費者物価指数は上昇するどころか、逆に下落しているのです。

先日発表された9月の数字は、総合が0.2%のプラスになりましたが、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の数字は、前年同月比で▲0.5%でした。つまり原油価格の高騰が総合の数字を押し上げただけで、他の物価については、まだ本格的な上昇には至っていないことがわかります。

日本銀行が掲げているインフレ目標値は、消費者物価指数で2%です。その基準からすると、消費者物価指数から見た今の日本は、まだデフレ経済下にあるように思えます。

しかし、企業間で取引されている物価を示した日銀の「企業物価指数」を見ると、明らかにインフレの芽が出てきています。

出所:日本銀行

ここ数年の企業物価指数の前年同月比は、2015年4月から2016年12月までマイナスが続き、2019年5月まではプラスを維持したものの、同年10月まではマイナス、2020年2月まではプラス、同年3月から2021年2月まではマイナスとなり、そこから一気に上昇率が高まっているのがわかります。

2021年9月の企業物価指数(速報値)は前年同月比で6.3%の上昇です。企業間で取引されるモノやサービスの値段は、私たち消費者にはなかなか見えないものですが、実はすでにインフレといっても良いくらい上昇しているのです。