わずか10カ月で70%上昇の原油高のワケ
何やらモノの値段が方々で上がっているような感じが強まってきました。一番、実感するのはガソリンでしょう。10月20日付日本経済新聞によると、「ガソリン価格の高騰が続き、灯油も7年ぶりに高値をつけ、冬の灯油需要期を控えて家計への負担増が懸念される」という記事が掲載されています。
また10月18日付の日本経済新聞では、「政府が国際エネルギー機関と連携し、主要産油国に対して原油の増産を要請することを決めた」という記事も掲載されました。
ちなみに10月20日付の読売新聞では、「資源エネルギー庁が発表した全国のレギュラーガソリンの平均価格(1リットルあたり)は、前週より2.5円高い164.6円となった。値上がりは7週連続。原油価格の世界的な上昇が影響し、約7年ぶりの高値が続いている」と書かれています。
実際、原油価格はどの程度まで値上がりしてきたのでしょうか。
原油価格の指標となるのは、米国で取引されているWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)という油種で、この価格が10月20日現在、1バレル=81.5ドルです。2021年の年初、1月4日の原油価格は1バレル=47.4ドルでしたから、わずか10カ月間で71.9%も上昇したことになります。
振り返ってみると、世界的に新型コロナウイルスが感染拡大した2020年4月、WTI原油の先物価格は、史上初の「マイナス」になりました。同年4月20日のWTI先物価格は一時、1バレル=▲40ドルまで下落したのです。
この時の原因は、急激な需給バランスの不均衡でした。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中で経済活動に急ブレーキがかけられた結果、原油に対する需要が大幅に後退。一方、石油の生産量を、需要減と同じレベルで減らすことができないため、一時的に大幅な供給過多が生じたのです。
もちろん、この時に市場初のマイナス価格をつけたのは、一時的に原油の貯蔵先が無くなり、原油先物取引の市場参加者がお金を払ってでも原油先物を売りたいという異常な事態に陥ったことが大きかったのですが、2020年4月にはここまで原油価格が低迷していたのに、それから1年半程度の期間で、今度は産油国に対して増産を要請するほど、原油価格は上昇ピッチを速めてきました。