夫婦に年の差があればあるほど、得なのか?

さて、全体観が分かったところで、まずこんな疑問がわいてくるのではないでしょうか。

「ということは、夫婦に年の差があればあるほど、お得ということ?」

老齢厚生年金の配偶者「加給年金」は、加算対象者である配偶者が原則65歳到達、もしくは老齢厚生年金(ただし、厚生年金被保険者期間20年以上の場合)を受け取るまで加算されるため、夫婦の年の差が大きいほどお得ではないかという話を聞くことがあります。

実際、損得があるのでしょうか?

確かに加算対象者が専業主婦であり、年の差が大きいと加給年金は「長く」加算されます。ただ、「得か?」という点はさらに慎重に計算をする必要があります。

ここで夫Cさん(65歳、Aさん同様ずっと会社勤め)、専業主婦の妻D子さん(55歳)の例を織り交ぜつつ解説します。

厚生年金保険等に20年以上加入している夫Cさんが65歳になった時、国民年金の第2号被保険者ではなくなります(老齢基礎年金の受給資格を満たしていない人を除く)。

夫が国民年金第2号被保険者でなくなると、妻D子さんも国民年金第3号被保険者ではなくなります。なぜなら、第3号被保険者であるための要件の1つに、「第2号被保険者に扶養されている人であること」と定めがあるためです。

そのため、妻D子さんは60歳になるまで国民年金第1号被保険者となり、国民年金保険料を納めなければいけません。2021年度の国民年金保険料は1ヵ月1万6610円、1年で約20万円となります。

夫婦の年の差があって長く加給年金(最大で年間約39万円)が加算されたとしても、加給年金の約半分は配偶者の国民年金保険料分(約20万円)として納めることになります。D子さんで言えば、60歳になるまで毎年約20万円を納め続ける必要があります。

年金額を多く受給することを考えるなら、一人ひとりが厚生年金保険に長く加入し続けるほうが近道となります。人生100年時代、老齢年金=終身年金であるため、受給金額としての損得を考えるのであれば、加給年金に頼るよりも、後者の方が得となるのは言わずと知れたことです。加給年金だけに限っていえば確かに年の差に比例して多くもらえるものの、受給額はトータルで考えるべきということです。