国民年金保険料を未納のまま放置すると、何が待ち受けるのか

ここでは国民年金保険料の未納による代表的なデメリットをご紹介します。先々困らないよう、国民年金保険料を支払い続けることの重要性を認識しておきましょう。

老齢基礎年金の受給額が減る

原則65歳以降に受け取れる国民年金の老齢給付(老齢基礎年金)は、40年間漏れなく保険料を納めることにより満額が支給されます。

老齢基礎年金の受給額の計算式は以下のとおりです。

出所:日本年金機構「老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)」を基に筆者作成

たとえば保険料の未納が12ヵ月ある場合、どの程度年金額が減ってしまうか令和3年度のケースで計算してみましょう。なお、保険料の全額免除・一部免除期間はないものとします。

老齢基礎年金満額(令和3年度) ×{保険料納付済月数 +(全額免除月数×4/8)+(4分の1納付月数×5/8)+(半額納付月数×6/8)+(4分の3納付月数×7/8)}÷ 加入可能期間

= 78万900円 ×(480ヵ月-12ヵ月)÷ 480ヵ月
= 78万900円 × 468ヵ月 ÷  480ヵ月
≒ 76万1378円

 保険料未納による減額
= 78万900円 -76万1378円
≒ 1万9522円

上記のケースでは年額約2万円のマイナスになりました。この減額が生涯続くことを考えてみましょう。65歳から95歳までの30年間老齢基礎年金を受給した場合、合計60万円の受給額が減ってしまいます。

令和3年度の国民年金保険料は年額19万円9320円(月額1万6610円)なので、1年間保険料を納めないことで約3倍の年金がもらえなくなるのです。

障害年金や遺族年金が受給できなくなる

国民年金保険料を未納のまま放置することで、障害年金や遺族年金がもらえなくなることもあります。障害年金・遺族年金は、病気やケガで一定の状態に陥った場合や家族が亡くなった場合に受け取れる国民年金の制度です。

障害年金・遺族年金を受け取るためには、原則、国民年金の加入期間の3分の2以上の保険料納付が必要です※。そのため未納期間が長く、この要件に満たない場合は障害年金・遺族年金をもらえなくなる可能性があります。万が一に備えるという意味でも未納の放置はおすすめしません。

※原則が満たせない場合の特例もあり。

財産が差押さえられることも…

国民年金保険料を未納のままにしておくと、最終的に財産が差押えられる場合もあります。

国民年金保険料の未納があると、まず日本年金機構からハガキや電話などで納付するよう連絡がきます。この段階で保険料を納めることができればよいのですが、そのまま未納を放置すると最終催告状が送付されます。

最終催告状の指定期限までに保険料を納付しない場合は最終的に督促状が送られてきます。督促状の期限を超えて保険料を納付した場合は未納の保険料に加えて延滞金が発生。それでもなお保険料を納付しない場合、裁判所から財産を差押さえられる可能性があります。

経済的な理由で国民年金保険料の納付が難しい場合は、「免除制度・納付猶予制度」の利用を検討しましょう。保険料の免除・猶予が認められた場合、その期間分の年金受給額は減額されますが、老齢基礎年金の受給資格期間に参入されます。

また免除・納付猶予が認められた期間の保険料は10年以内なら追納できます。追納とは、免除・納付猶予を受けた期間の保険料をあとから納めることができる制度です。保険料を追納することにより、減額された年金受給額を満額に近づけることができるのです。