この1年ほど新興国株式のパフォーマンスが好調を維持しています。とりわけ、昨年9月頃から新興国のテクノロジー関連株を中心に先進国を上回るパフォーマンスを記録しており、今年に入って先進国株式とのパフォーマンスの差はますます広がっていることが確認できます。こうした市場環境の改善は投資信託市場にも影響を及ぼしており、今年4月には新興国株式ファンドが10カ月ぶりの資金流入に転じるとともに、その資金流入額は2024年7月以来の高水準となりました。これは4月に新規設定された新興国株式ファンドの大型設定による要因は大きかったものの、足元では他の新興国株式ファンドにも資金流入の動きが広がっているようです。今回のコラムでは、新興国株式ファンドの資金動向を詳しく見ていきたいと思います。
新興国株と先進国株のパフォーマンス(2025年5月31日~2026年5月31日)
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新興国株式ファンドの残高はここ2年ほど5兆円~6兆円程度を維持してきましたが、今年5月の残高は6.2兆円と2月に記録した6.1兆円を超えて過去最高水準に達しています。なお、データが遡れる1998年以降では金融危機前のBRICsブームにあたる2007年12月末時点の6.0兆円がグラフの期間以前の最高水準でした(投信評価機関モーニングスターのデータによる)。一方で、新興国株式ファンドへの資金フローを見ると、2025年は資金流出に苦しんだものの、今年4月に+932億円と10カ月ぶりにプラスに転じた後、5月には-112億円の資金流出と、小幅ながら再びマイナスに転じています。
新興国株式ファンドの純資産残高と純設定額の推移(2021年5月~2026年5月)
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それでも、新興国株式に対する投資家の関心は根強いものと考えられます。新興国株式ファンドは、単一国に投資するもの、アジアや欧州といった地域の新興国に特化したもの、そして幅広く新興国株に投資するものなどがありますが、幅広く投資するタイプには資金流入が継続しているためです。2023年~2024年の資金流入局面ではインド株ファンドに圧倒的な水準の資金流入が見られるなど、単一国のタイプへの資金流入が中心となっていましたが、この1年ほどの局面では新興国全体(グローバル)に投資するタイプのファンドに資金流入が目立っています。
以下のグラフを見ても分かるように、新興国全体(グローバル)のタイプは、4月の+1378億円の資金流入額からは減速したものの、5月も+573億円の資金流入を記録しており、6カ月連続のプラスとなっています。過去12カ月で見ても、11カ月が資金流入となるなど、単一国に投資するタイプの資金流出が続く中で、新興国全体(グローバル)のタイプには投資家の継続した需要が見られています。こうした資金流入の背景にあるのは、やはり新興国株式のパフォーマンスが改善してきたことにあります。それも単一国が主導する形ではなく、新興国のテクノロジーセクターが主導する相場上昇であったため、新興国全体(グローバル)の上昇を捉えたいという動きが強まったものと考えられます。
新興国株式ファンドにおけるタイプ別の純設定額(2021年5月~2026年5月)
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金融危機以降の20年ほどの投資信託市場を振り返ると、高金利を背景に新興国通貨・債券への人気が高まったり、高い経済成長への期待から単一の新興国株式投資の人気が高まったりする場面はあったものの、新興国株式全体が注目される動きはさほど見られませんでした。しかし、足元で新興国株式が先進国株式を大きく上回るパフォーマンスを記録していることで、改めて(かつ久しぶりに)新興国全体の成長率の高さが注目されているようです。
今年4月に国際通貨基金(IMF)が公表した最新の経済見通しによれば、目先の新興国の経済成長率は先進国の2倍を超える成長率となることが見込まれています。新興国株式ファンドの残高が過去最高水準に達したと言っても、長い期間にわたって新興国株投資が見過ごされてきたこと、日本の投資信託市場の残高が200兆円規模にまで大きく増加していることから、新興国株式への資産配分は限定的なものにとどまっています。米国株式、グローバル株式を中心に先進国株式ファンドの残高増加も続く中で、新興国株式ファンドへの関心は徐々に高まっていくことが期待されます。
地域別のGDP成長率
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