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こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2025.06.20
会員限定
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第20回目です。

Q:職員「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

A: 支店長「そうですよね、忙しいのはすごくわかります。しかし常に忙しいわけではないと思うので、何とか実践できませんか?」

 

森脇's Answer:

日々の金融取引における事務量は常に一定ではなく、大きく波があるのは確かです。とはいえ、多種多様な業務をミスなくこなしていかなければならないなかで、慣れない仕事が追加されるのには抵抗感があるでしょう。「何とかやってくれ」と言われても、積極的な気持ちにはなれないかもしれません。そうであれば、投信販売という仕事について、発想を変えて考えてみる必要がありそうです。

投資商品の売り子になるわけではない

まず伝えたいのは、投資商品のセールスが業務に組み込まれたとしても、投資商品を売ることそのものが仕事なのではないということです。お客さまの不安や困り事を軽減したり、希望をかなえたりするためのお手伝いをすることこそが、皆さんの仕事です。投資商品は、そのための手段の一つにすぎないのであり、必要のない人に販売することなど、ないのです。預貯金や融資を取り扱う金融機関では、総合的な金融サービスを提供できるのです。

お客さまに合った提案をするために最も重要なものが「顧客情報」です。事務手続きを通じたお客さまとのコミュニケーションで得た情報をしっかりと記録し、組織内で連携しましょう。これが金融機関の大切な財産になります。

現場職員一人ひとりが、金融機関の顔

お客さまの情報を収集する一方で、お客さまに自金融機関の商品やサービスを知ってもらう活動にも注力してみてください。どんなにすばらしい商品やサービスを提供できる態勢が整っていても、お客さまがそれを知らなければ選ばれないどころか、検討さえしてもらえません。まずはお客さまの選択肢として知ってもらうための情報を提供するのです。また、金融商品の契約は、食品などと違って購入頻度は高くありません。伝えたときには必要がなくても、人生の転機や意識の変化などでニーズが発生するときが出てきます。そのようなきっかけがあった瞬間に、皆さんの顔が浮かんで相談してみようと思ってもらえるよう、常日頃からお客さまにCMをしておくのです。

多くの一般生活者がお金について将来の不安を抱えているにも関わらず、金融機関を利用するのは現金の入出金くらいで、それ以外のサービスや商品について詳しく知りません。また、聞いてみたいという気持ちがあっても、職員に話しかけたら他の不要な商品のセールスをされるのではないかとの不安から、積極的に話しかけてくる人はごく少数でしょう。

日々の業務が忙しいなか、一人ひとりのお客さまからじっくり話を聞いて案内するのは難しいかもしれませんが、多くの人に広くサービスや商品を教えるという活動なら、すぐにできそうだとは思いませんか。どのように一声かけるのか分からないという職員には、例えば「普通預金よりこちらのほうが金利が良いのですが、ご使用予定がすぐにないご資金であれば預け替えを検討してみますか?」といった情報提供を、一律的でいいので実践してみるとよいでしょう。普通預金から定期預金への預け替えなど、自分で説明できる商品なら何でもいいのです。まずは一歩を踏み出しましょう。

お客さまに声かけすると、必ず何らかの反応があります。「いりません」「時間がありません」といった反応もあるかもしれませんが、なかには「やってみようかな」などの積極的な反応も得られます。このように簡単な声かけから契約にいたったと職員から報告を受けたとき、私は「お客さまの反応はいかがでしたか」と問うのですが、ほぼ全ての職員が「ありがとうと言われました」と言います。お客さまからこのように言ってもらえるのが、対面金融機関の醍醐味であり感動の瞬間です。

このようなコミュニケーションを続けながら、自金融機関がお客さまのために提供できる商品やサービスがないかを考えていきましょう。投資商品の販売も、この活動の延長線上にあるということを忘れないでください。

支店長は本部の指示を翻訳して、職員に伝える

支店長は本部から出される目標や指針を支店内に伝達する役割があると思いますが、その際に日常業務との関連性や、自金融機関の果たすべき役割のなかにおける位置付け、さらに経営理念に照らした上での意義などと併せて伝えてほしいです。目の前の業務に追われがちな現場職員が新しい物事に向き合う上では、このようなある種の翻訳が重要だと考えます。これは、支店の特徴や所属職員の特性について理解している支店長でなければできないことです。

また、新しい取り組みへの指示は「セールスしてください」などといった一方的なものにするのではなく、「何をどこまでできるか」という自主目標を定めてもらうとよいでしょう。継続的に取り組み状況を確認することも忘れてはいけません。新しいことを行うのは面倒に感じるものですし、失敗への怖れや恥ずかしさもあります。見てくれる人がいなければ、自然消滅してしまいやすいものです。定期的なミーティングなどを実施し、自分の成果を報告する時間と場があれば、やりがいにつながると思います。成果が上がった場合はもちろんですが、そうでなくても真摯な取り組みを継続する職員には、賞賛や労いの言葉をかけてあげてください。

金融機関は、金融商品やサービスを通じてお客さまのお役に立つことで世の中に価値を生み出しています。各職員がその一翼を担っているという自覚と実感を持って取り組めるようになるために、いかにして道筋をつけることができるかを考えていきましょう。

Q:職員「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

A: 支店長「そうですよね、忙しいのはすごくわかります。しかし常に忙しいわけではないと思うので、何とか実践できませんか?」

 

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著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
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