finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

「ふてほど」金融不祥事は「もうええでしょう」… 性悪説に立ってモニタリング高度化を

文月つむぎ
文月つむぎ
2024.12.19
会員限定
「ふてほど」金融不祥事は「もうええでしょう」… 性悪説に立ってモニタリング高度化を

医療関係者も口々に「NISA」「オルカン」と…

12月2日に「2024ユーキャン新語・流行語」のトップ10と年間大賞語が発表され、年間大賞は「ふてほど」(不適切にもほどがある)が選ばれた。「新NISA」は30候補の一つにノミネートされていたが、残念ながらトップ10に入らなかった。一方、日本経済新聞社が発表した「2024年の日経MJヒット商品番付」では、「新NISA(大幅な制度拡充で投資熱)」が西の横綱に君臨した(東の横綱は「大谷50-50」。)

ちなみに、過去の日経MJヒット商品番付を調べてみると、金融業界ワードがいくつか見受けられる。古くは「新金融商品(マル優)」(1982年)があり、「NTT株」(1987年)、「トマト銀行」(1989年)、「外債・外貨預金」(1996年)、「東京三菱銀行の預金(半年強で2兆円超え)」(1997年)、「金・金庫・貸金庫(ペイオフ解禁に備えて)」(2002年)、「株式ネット取引口座」(2005年)、「マイナス金利特需」(2016年)、「キャッシュレス」(2019年)と続く。

その時代の過半を大手町や霞が関で過ごしてきた筆者にとっては、「確かにそれぞれがヒットしていたな。」と懐かしく思うが、その中でも今年の「新NISA」は横綱にふさわしい大ヒット商品ではないかと感じている。関連して「オルカン」や「S&P500」も年間を通し、話題の単語となっていたことは皆様ご承知のことと思う。

余談だが、最近、住まい近くの総合病院で、若い看護師や理学療法士の方々と世間話をする機会があった。筆者が金融業界に関わっていると知ると、幾人もの若者が「NISAは始めた方が良いですか?」あるいは「NISAでは、どのような商品が良いですか?例えば、『オルカン』それとも『S&P』?」などと目を輝かせて聞いてくる。最初、国内株式市場が最高値を付ける中、彼らが単に流行に乗り遅れまいとしているのかなと思っていたが、会話の中で「2000万円問題」や「老後資金」、「(公的)年金」、「インフレ」、「長期投資」といった単語が彼らの口から出ており、目先の収益狙いという感じではなく、まさに腰を据えて「投資」に取り組もうとしていることが感じられた。ただし、彼らは特段、病院内で金融教育を受けたという訳ではなく、ネットやSNS、友人等から情報収集しているようだ。こうした金融用語には馴染みが薄いであろう若い医療関係者までもNISA制度に興味を持ち、目的をまずまず正しく理解しつつ、積極的に取り組もうとしていることに驚きと喜びを感じた次第だ。

 

想像のななめ上を行く不祥事の数々

こうした中、昨年末から今年にかけて、金融業界では、屋台骨を支えるリーディングカンパニーや監督機関、公的取引機関において、まさに「ふてほど」事件が多発した。

まず株式取引絡みにおいて、2023年12月、証券取引等監視委員会(SESC)が内閣総理大臣及び金融庁長官に対し、SBI証券会社がIPOの初値で株価操作を行ったとして行政処分を行うよう勧告した。同社の役員らが、IPOの初値を公募価格以上に変動させるために、海外の現地法人や所属IFA等を使って、公募価格と同価格で買い付けを行うように投資家の勧誘を指示したという。主幹事を務めた銘柄の初値が公募価格を上回った点をアピールすることで、今後の主幹事獲得につなげようとした。

また、今年10月には、金融庁に出向中の裁判官がインサイダー取引をした疑いがあるとして、SESCが強制調査を行った。この裁判官は業務でTOBに関する情報を取り扱っており、知り得た情報をもとに今年4月に出向した直後から毎月、複数回に渡り不正な取引を行っていた疑いがあるという。

同じく10月、東京証券取引所の上場部開示室に所属する職員が、TOBに関する未公開情報をもとに親族に株取引を推奨し、親族は実際に複数回の取引を行い、少なくとも数十万円の利益を得ていたとして、SESCが調査に入った。

IPOにおける公開価格の値付けについては優越的地位の乱用を引き起こしやすく、SBI証券以外にもSESCが注意喚起を行った大手証券会社が存在する。また、TOBに関するインサイダー取引の摘発も散見されており、各証券会社ではコンプライアンスの徹底が図られてきたはずだが、まさか、リーディングカンパニーや金融庁、東京証券取引所において、これほどまでに教科書的な不正が発生するとは思ってもみなかった。「大手金融機関の職員だから、金融庁職員(出向中の裁判官)だから、東証職員だから、コンプライアンス意識は人一倍高いはずだ。」という考えは思い込みに過ぎなかったということだろう。今後は性悪説に立ち、モニタリングの高度化に努める必要がある。

また、通常の支店業務でも驚きの不祥事が発生している。今年7月には、野村證券において営業職として勤めていた社員が広島市に住む顧客の女性に睡眠作用のある薬物を飲ませたうえで現金1,780万円余りを奪って住宅に火をつけたとして強盗殺人未遂と放火の罪で起訴された。また、11月には、三菱UFJ銀行が支店の貸金庫から顧客の現金や貴金属を盗んだとして、貸金庫の管理を担当していた行員(店頭の業務責任者)を懲戒解雇したと発表している。

顧客の信用を逆手に取った犯行が証券界と銀行界のトップカンパニーで発生したことに驚きを隠せない。こうした犯行にせよ、IPOやTOBに絡む違反行為にせよ、それにより失った「顧客の信用」を取り戻すのは簡単ではなく、彼らには茨の道が待っている。良好な株式市場のもと、新NISAやiDeCoをきっかけに「貯蓄から投資」の流れが強まりつつある中での不正事件はまことに残念だ。流行語ではないが、こんな不祥事は「もうええでしょう」。

医療関係者も口々に「NISA」「オルカン」と…

12月2日に「2024ユーキャン新語・流行語」のトップ10と年間大賞語が発表され、年間大賞は「ふてほど」(不適切にもほどがある)が選ばれた。「新NISA」は30候補の一つにノミネートされていたが、残念ながらトップ10に入らなかった。一方、日本経済新聞社が発表した「2024年の日経MJヒット商品番付」では、「新NISA(大幅な制度拡充で投資熱)」が西の横綱に君臨した(東の横綱は「大谷50-50」。)

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #ニュース解説
  • #NISA
前の記事
【文月つむぎ】「年収の壁」は何のためにあるのか いっそのこと扶養控除は愛猫・愛犬にも?
2024.11.27
次の記事
【文月つむぎ】「NISA限定の投資助言免許を」 金融庁アドバイス報告書に透ける思惑
2025.01.08

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント

2025.06.10

【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く

2025.06.04

【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」

2025.05.07

【文月つむぎ】私が相場の先行きを悲観しない究極の理由

2025.04.16

【文月つむぎ】「NISAは現役世代向け」という誤解 シニア層への普及を急ぐべき政治的背景とは

2025.03.11

【文月つむぎ】日証協の「新NISA1年調査」を精読する ゴールベースアプローチの意識が低い?

2025.02.18

【文月つむぎ】「老後2000万円問題」から6年、いまだに資産運用より節約術のほうがウケる世相を憂う

2025.02.10

【文月つむぎ】J-FLEC認定アドバイザーが1000人超に 親しみやすさと使い勝手の向上を急げ

2025.01.29

【文月つむぎ】「NISA限定の投資助言免許を」 金融庁アドバイス報告書に透ける思惑

2025.01.08

「ふてほど」金融不祥事は「もうええでしょう」… 性悪説に立ってモニタリング高度化を

2024.12.19

おすすめの記事

10億円以上の資産家が多いのは山口県、北陸ではNISA活用が進む。県民性から読み解く日本人の投資性向とは?

Finasee編集部

「オルカン」「S&P500」を追う2強海外アクティブ投信。なぜ? みんなが買う理由がわかった!

Finasee編集部

三菱UFJ銀行の売れ筋で「日経225」の評価に変化、新規にトップ10入りしたファンドの特徴は?

finasee Pro 編集部

マン・グループの洞察シリーズ⑨
何をしたらよいか分からない時にどうすべきか?

トランプ関税の混乱後の新規設定ファンドは安定重視? 750億円超の設定額となったファンドとは? =25年5月新規設定ファンド

finasee Pro 編集部

4カ月ぶりに純資産残高が増加したものの資金流入は低調、「半導体」「暗号資産」のパフォーマンスが好調=25年5月投信概況

finasee Pro 編集部

外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行

Ma-Do編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
三菱UFJ銀行の売れ筋で「日経225」の評価に変化、新規にトップ10入りしたファンドの特徴は?
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行
マン・グループの洞察シリーズ⑨
何をしたらよいか分からない時にどうすべきか?
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
トランプ関税の混乱後の新規設定ファンドは安定重視? 750億円超の設定額となったファンドとは? =25年5月新規設定ファンド
金融庁が「プログレスレポート2024」の公表を休止した深いワケ 「FDレポート」との違いが出せなくなった?
野村證券の売れ筋で浮上した米国株ファンドとは? リスク分散型の「のむラップ・ファンド」の人気も高まる
SBI証券でインベスコ「世界のベスト」を評価、反対に人気が離散したファンドとは?
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
外貨関連を軸に多彩なサービスを展開顧客の信頼を勝ち取る「総資産アプローチ」case of SMBC信託銀行
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
三菱UFJ銀行の売れ筋で「日経225」の評価に変化、新規にトップ10入りしたファンドの特徴は?
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
トランプ関税の混乱後の新規設定ファンドは安定重視? 750億円超の設定額となったファンドとは? =25年5月新規設定ファンド
野村證券の売れ筋で浮上した米国株ファンドとは? リスク分散型の「のむラップ・ファンド」の人気も高まる
4カ月ぶりに純資産残高が増加したものの資金流入は低調、「半導体」「暗号資産」のパフォーマンスが好調=25年5月投信概況
マン・グループの洞察シリーズ⑨
何をしたらよいか分からない時にどうすべきか?
「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
今月スタートした「投資運用関係業務受託業」を金融庁が激推し!金融機関に勤める中堅・若手の有望な移籍先に?
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
浪川攻の一刀両断
手数料自由化とファンドラップから見る日本と米国の証券リテール改革の相違
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
トランプ関税の混乱を横目に「戦略的自律」をめざす欧州企業に可能性、「テンバガー・ハンター・ヨーロッパ」の視点とは?
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら