finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

「沈黙は金」は日本の美徳にあらず  
政党、車業界、そして金融業界も

文月つむぎ
文月つむぎ
2024.01.25
会員限定
「沈黙は金」は日本の美徳にあらず  <br />政党、車業界、そして金融業界も

自民党派閥による政治資金規正法違反事件が岸田内閣の支持率低下に拍車をかけている。主要メディアが1月中旬に行った最新の全国世論調査では、内閣支持率は2割台にとどまる一方、不支持率は6割超に達した。一連の問題に関し、各派閥の幹部らが国民に十分説明しているかについては、「思わない」との回答が9割を超えており、「政治不信ここに極まれり」といった様相を呈している。

政党にしろ、企業にしろ、不祥事が発生した場合、いかに迅速かつ真摯に対応するかで、その後の信頼度や評判の回復度が違ってくるように思う。企業において、不正行為をしているとメディアや当局等より指摘を受けた場合、組織への悪影響を最小限に抑えるためには、まずは、経営陣など責任者が事実関係を早期に徹底調査することを表明し、その後、順次、自ら真相の究明状況や不祥事対応の方針内容、具体的な対応状況、再発防止に向けた取組みなどを世間に対し公表・説明するとともに、主要株主や取引先、債権者などのステークホルダーには、個々に説明する必要がある。もし、自ら真相究明する中で、不適切な行為ではないと判断したのであれば、その旨を丁寧に説明すれば良いのだ。

不正を隠す罪、業界ごと負のレッテルに巻き込む罪

他方、当局等より不正行為の指摘を受けたことを認めつつも、その後、責任者が自ら率先して、どのようにその事案を把握・認識・評価し、対応しようとしているのか、ほとんど説明しないとなると、皆の不信感は募るばかりだろう。その間、メディア等がじわじわと真相を突き止め、もし、当初の想定よりも不正の規模が広がる、あるいは深刻度が増したことが明らかとなった場合は、さらなる信用失墜を招くことになる。昨年発覚した大手中古車販売業者の事例に代表されるように、真の責任者が自ら説明を尽くさず沈黙を続ければ続けるほど、人々の信用が薄れていくことを理解できないとなると、責任者・経営者としては失格だろう。

また、不正行為に関わった社・者が他の業界にも広がっている場合、当事者の具体的な名前が公表されず、どのような対応が行われているか、誰からも十分な説明が無い場合は、関連する業界全体のイメージがダウンすることとなる。善良な同業社・者においては、「自分(たち)は不正を行っていない」といくら唱えたところで、業界に一旦張られた負のレッテルをはがすことは容易ではなく、個社・人の信頼回復に多大な労力を要することとなろう。

このような場合は、業界の団体や協会が、適切に自浄作用を働かせるべきだ。法人組織の団体・協会であれば、懲戒規程を設け、所属員が団体や協会の名誉又は信用を毀損する行為を行った場合は、懲戒処分を行う旨を定めているはずだ。また、懲戒処分を行う場合は、事実の調査や審議を公正かつ中立に行うとともに、対象となる所属員の弁明を聴取する等の反証の機会を与えるほか、処分に不服がある場合は、不服の申し立てをすることが出来ること等も定めているものと思われる。こうした一連の手続きを厳格に行い、自らを律する姿を広く世間に公表することができれば、業界の信用回復のスピードも上がってくるのではないか。

ちなみに、業界の団体・協会において、処分の対象となる所属員が重鎮・権限者である場合、公正・中立に事実調査や審査を行い、適切に処分を行うことができるか否かは、団体・協会役員陣の「誠実さ」「高潔さ」にかかっているように思う。「気高さ」「品格」と言い換えても良いかもしれない(そもそも、処分の対象となる社・者自身に「誠実さ」や「品格」があれば、団体・協会が苦労することもないのだろうが…)。

言葉足らずの説明では「忖度」を疑われかねない

「品格」と言えば、以前、ベストセラーとなった「国家の品格」(藤原正彦氏著)や「企業の品格」(皆木和義氏著)では、「気品」や「品性」を重んじる武士道の精神や利他の心、助け合いの精神などの重要性を説いている。「自分さえよければ良いという利己主義(エゴイズム)や利益至上主義が、コンプライアンス意識や思いやり、助け合いの精神を鈍麻・微弱化させたり、喪失させたりしているのではないか」との主張には、筆者も首肯するところである。かつて“Made in Japan“と言えば高品質の証であったように、〇〇企業の商品やサービスと言えば顧客本位の高品質なものであると思ってもらうためには、経営者にも、個々の職員にも高い品質意識が求められる。これは、近江商人の教えである「売り手良し、買い手良し、世間良し」の「三方良し」に通じるものでもあろう。一方、「品格」は一朝一夕に醸成されるものではなく、長い年月をかけて形作られていくものである。それゆえに、「下品な振る舞い」を正すのも容易ではないことは心しておく必要がある。

責任ある者が十分説明を尽くすべきというのは、行政機関や業界団体・協会など処分を下す者にも言えることだろう。彼らには、中立性・公正性が強く求められており、指摘事項や処分内容、フォロー状況などに関し合理性があることを、必要に応じ、類似事案とも比較しつつ、丁寧に説明すべきだ。もし、合理的・整合的でない対応が行われ、背景説明等が不十分なものにとどまった場合、メディアや筆者のようなウォッチャーのみならず、多くの国民に「何か忖度があったのではないか」との不信感を与えてしまうことになる。まさに我が国の「品格」が問われることになる。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #証券
  • #金融庁
前の記事
相次ぐ株価操作問題 原因究明の秘訣は「何故、なぜ、ナゼ」にあり
2024.01.10
次の記事
商品選びは「ご自分で」? かゆいところに手が届かぬ認定アドバイザー
ラストワンマイル支援へ既存アドバイザーと連携を
2024.02.07

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】運用立国議連の新「緊急提言」を読み解く!NISA、税制の見直しで対応が求められる3つのポイント

2025.12.04

【文月つむぎ】証券口座乗っ取り被害ゼロへ 金融庁の新監督指針を読み解く

2025.11.07

【文月つむぎ】片山さつき新大臣に贈る言葉

2025.10.28

【文月つむぎ】統合・再編議論の先は? 金融庁WGが照らす地域金融機関の未来

2025.10.20

【文月つむぎ】発足はいつ?高市政権下での金融機関の役割

2025.10.10

【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ

2025.10.06

【文月つむぎ】iDeCoがんばれ、NISAに負けるな! 
現状打破へ「7つの提言」

2025.09.22

【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント

2025.09.12

【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態

2025.08.29

【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは

2025.08.05

おすすめの記事

こんな議論してたっけ!?資金交付制度だけじゃなかった、地域金融力WG報告書案で飛び出した注目ポイント3選

川辺 和将

マネックス証券の売れ筋で国内株は「ブル型」で強気、「純金ファンド」がトップ10から消える

finasee Pro 編集部

「誰も取り残さない」を理念に企業型確定拠出年金を運営―電通総研ITがアプリを活用して実践した効果的な施策とは?

finasee Pro 編集部

【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編

finasee Pro 編集部

楽天証券の売れ筋で「オルカン」がトップに。米国市場への警戒感を背景に「世界のベスト」もランクイン

finasee Pro 編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
マネックス証券の売れ筋で国内株は「ブル型」で強気、「純金ファンド」がトップ10から消える
こんな議論してたっけ!?資金交付制度だけじゃなかった、地域金融力WG報告書案で飛び出した注目ポイント3選
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【運用会社ランキングVol.3/販売会社一般編②】販社からの評価を高める「野村」の底力と「フィデリティ」の運用力、2年連続で総合トップの「アモーヴァ」は安泰か
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
「誰も取り残さない」を理念に企業型確定拠出年金を運営―電通総研ITがアプリを活用して実践した効果的な施策とは?
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
J. フロント リテイリングに聞く企業型確定拠出年金制度運営の秘訣―継続投資教育の参加率が驚異の80%超えの理由とは?
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
第16回 資産運用にまつわるさまざまな常識を疑え!【総集編】
「資産運用において疑うべき常識」を振り返る
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉖
~米国投資信託最新事情
ミューチュアルファンド初の30兆ドル突破も、米国株ファンドから過去最大の資金流出
【運用会社ランキングVol.3/販売会社一般編②】販社からの評価を高める「野村」の底力と「フィデリティ」の運用力、2年連続で総合トップの「アモーヴァ」は安泰か
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら