投資信託の会計処理
私たちが知る金融商品会計は、前世紀末の、いわゆる「会計ビッグバン」のころに導入されたものだ。時価会計を含め、当時としては画期的な仕組みが多く導入される一方、「その他有価証券」の「資本直入(※)」という技法を用いることで、「市場の時価が変化するだけで企業業績が左右されてしまう」という実務界の懸念に配慮するなど、非常にバランスの取れたものであったことは間違いない(※なお、その後の会計基準の変更等に伴い、現在では「資本直入」ではなく「純資産直入」ないし「その他包括利益計上」などの用語が使われている)。その金融商品会計基準自体は、小幅な修正が多数付け加えられているにせよ、基本的に現在でもそのままの枠組みで使用されている。
ただ、基準が制定された1999年時点と現時点を比べると、社会情勢には大きな変化が生じていることを忘れてはならない。その典型例が、基準制定時には考えられなかったような、さまざまな投資スキームの発生だ。とりわけ、高度で複雑な金融商品だけでなく、比較的シンプルな、会計基準の「穴」を突くような商品も開発されており、多くの機関投資家に好んで購入されている。前回の『ヘッジ戦略としての「債券ベアファンド」を買わざるを得ない会計上の理由』でも説明した、「デリバティブを内包した投資信託」も、その典型例だろう。