金利上昇リスク
本連載シリーズは、おもに金融商品会計や金融規制など、「制度面」から、銀行等機関投資家にとって有益な情報を提供することを目的としている。したがって、著者自身の「相場観」について申し上げることは、基本的には控えたいと思っている。ただ、昨今のインフレ率上昇にともない、利上げ観測が高まっていることは間違いない。正確な数値を引用しておくならば、6月23日に公表された5月時点の消費者物価指数(CPI、2020年基準)は、総合指数が+3.2%、生鮮食品を除いたいわゆる「コア」が+3.2%、さらにエネルギーも除いた「コアコア」が+4.3%(いずれも前年同月比)であり、これだけで見れば、日銀が長らく目標としていた「2%インフレ」は既に達成されていることになる。本稿執筆時点において日銀はイールドカーブ・コントロールを含めた緩和的な金融政策を維持しているが、いずれにせよ「備えあれば憂いなし」、であろう。
そもそも銀行等金融機関の場合は、業種特性として、恒常的に金利リスクか信用リスクの、少なくともいずれかを抱えざるを得ない運命にある。預金という(おもに)短期の金利で資金を調達し、それを調達金利以上で運用しようとすれば、ベットすべきリスクは長期金利か信用リスクのいずれかとならざるを得ないからだ。当然、金利リスクのコントロールは多くの金融機関にとって、非常に悩ましい問題である。