銀行業におけるヘッジ会計
著者自身は現在、金融商品会計と金融規制に特化した金融コンサルティング会社を運営しているが、こうしたなかで痛感するのが、リスク管理上、金融商品会計や金融規制をうまく使いこなしていくことの重要性だ。とりわけヘッジ会計と呼ばれる会計上の技法は、古くて新しいテーマのひとつである。昨今の物価上昇はウクライナ戦争勃発にともなう世界的な資源価格上昇による一過性のものなのか、それとも日本銀行の10年来の金融緩和が功を奏し、本格的に日本経済が回復基調に入ったのかどうかは、議論が分かれるところだろう。
著者自身、外国で発生した、金利上昇局面における流動性管理に失敗したことに起因する金融機関の経営破綻のような出来事は、日本では生じにくいのではないかとは考えている。また、発足したばかりの「植田日銀体制」が、短期的に金融政策を大幅に変更する可能性はさほど大きくない、というのが市場コンセンサスに近いだろう。
ただ、ひとつだけ間違いないことがあるとすれば、もしも今後、本格的に金利が上昇する場合、それは多数の金銭債権を抱えている銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合といった金融機関にとって、経営上のリスクとなり得ることだ。昔から、備えあれば憂いなし、という。こうしたなかで、本稿では著者が経営する会社に最近頻繁に寄せられる、「第24号ヘッジ」と呼ばれるものの考え方の一端を紹介しておきたい。