finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
金融専門の公認会計士が示す 攻めの金融商品会計のアイデア

リースのオンバランス化とリスク・アセットへの影響を探る

岡本 修
岡本 修
新宿経済研究所 代表社員社長 公認会計士
2025.01.22
会員限定
リースのオンバランス化とリスク・アセットへの影響を探る

新しいリース会計とは?

企業会計基準委員会(ASBJ)は昨年9月、『リースに関する会計基準』(以下「基準」)、『リースに関する会計基準の適⽤指針』(以下「指針」)および『適用指針設例』を公表した(本稿では便宜上、これらをまとめて「リース基準等」ないし「新しいリース基準等」と称したい)。

これらのリース基準等が制定・公表されるに至った経緯については、会計基準の国際的調和だとされる。基準BC第7項等によれば、国際会計基準審議会(IASB)が2016年1月に『IFRS第16号リース』を公表。続いて米国財務会計基準審議会(FASB)も同2月に『Topic 842 リース』を公表したことで、わが国のリース会計もこれらと整合性を持たせる必要が生じた、というのがASBJの言い分だ。具体的には、両者に共通する「オペレーティング・リースも含めたすべてのリース取引について、資産・負債を計上する」という取扱い(いわゆるオンバランス処理)をわが国の会計基準にも導入する、というものである(※ただし少額・短期などのリースを除く)。

著者自身、「国際的な会計基準でオンバランス処理が義務付けられたから、わが国もこれに追随する」という意味での「ASBJの主体性のなさ」、あるいはほとんどのリース取引の資産・負債計上を義務付けるという非現実性には首をかしげざるを得ないが、これらの点については、本稿ではいったん脇に置く。

新しいリース基準等は2027年4月以降開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用され、25年4月以降の早期適用も可能とされている。ただ、ことに金融機関(とりわけ多くの国内基準金融機関)に関しては、この25年ないし26年からの早期適用は実務上困難だと考えられる。金融庁がいわゆる「バーゼルⅢ最終化とFRTB」を25年3月31日以降すべての金融機関に適用することとされているため、準備期間、事務負荷などを考慮すれば、バーゼルⅢ等とリース基準等を同時に適用開始するのは現実的でないからだ。実務的には多くの金融機関が2年後の2027年4月以降の適用を視野に入れるのではないかと推察する。

現行リース会計だと「オペレーティング・リース」の区分があった

では、今回のリース基準等の特色はなにか。

そもそも一般にリース取引とは、何らかの「モノ」の所有者が貸手(レッサー)として借手(レッシー)に対し、一定期間、使用収益する権利を与える契約を指し、借手はその対価として使用料を貸手に支払う取引をいう。したがって、「リース取引の会計処理」そのものを詳説するならば、本来ならば貸手側と借手側の双方について議論する必要があるが、本稿は「金融機関のリスク・アセットへの影響」という観点から、借手側の議論に限定したい。

現在のリース会計は、ASBJが2007年3月に公表した『企業会計基準第13号 リース取引に関する会計基準』(以下「現行リース基準」)などに規定されているが(※ちなみにこれらは今回の新しいリース基準等の公表に伴い、近い将来廃止されるとみられる)、これによれば借手側のオンバランス処理が求められるリース取引は「ファイナンス・リース取引」に限定されており(現行リース基準第10項~第12項等)、「オペレーティング・リース取引」については、通常の賃貸借取引として会計処理すれば良いこととされている(現行リース基準第15項)。ちなみに現行リース基準でいうところの「ファイナンス・リース取引」とは①契約期間での中途解除ができない(またはこれに準じる)取引であって、②借手が経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、③リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担するものをいう(現行リース基準第5項を要約)とされ、「オペレーティング・リース取引」はファイナンス・リース取引以外のリース取引をいう(現行リース基準第6項)とされている。逆にいえば、「オペレーティング・リース」に該当すれば(あるいは「ファイナンス・リース取引」に該当しなければ)、面倒なオンバランス処理は必要なかったのである。

これを図示すると、図表1のとおりである。

図表1 現行リース基準の考え方​

(出所)著者作成

オンバランス処理の面倒さ

では、オンバランス処理のなにが面倒なのか。

端的にいえば、見積もりの要素が出てくることと、将来のキャッシュ・フローをリース契約ごとに自ら計算しなければならないことにある。

たとえば、ある企業が自動車を5年間のリース契約で借りていたとする。この自動車のリース取引はファイナンス・リース取引だったとし、貸手であるリース会社に支払う年間のリース料が100万円(5年間のリース料の支払総額は500万円)だったとする。このとき、このリース契約に通常の賃貸借処理が認められた場合は、毎年の会計処理は非常にシンプルだ。支払った金額を費用に計上すれば済む。たとえば『銀行経理の実務(第9版)』(P507)の記述によると、営業経費の項目に「土地建物機械賃借料」という項目があるが、この科目を使用することとし、期間帰属のズレが発生しなかった場合の会計処理は、図表2のとおりである。

図表2 通常の賃貸借処理(オフバランス処理)の会計処理例(期ズレなしの場合)

(出所)著者作成

ところが、これがリース会計に基づき、いわゆるオンバランス処理が求められると、こうはいかない。オンバランス処理の考え方は、「リース会社からおカネを借りる取引」と「固定資産を買う取引」があたかも別物であるかのように会計処理しなければならないからだ。この場合、リース会社に支払う毎年のリース料の総額が「元利金の支払い」、リース料から利息を控除した金額などが「固定資産の取得原価」とみなされることになる。なにより、「おカネを借りる取引」だとすれば、金利相当額を見積もらなければならない。

ここで、この企業が銀行などから融資を受ける時の金利が2%だった事例で考えてみよう。

この企業はまず金利2%で負債を計上する必要があり、この金利はリース会社に「リース料」名目で毎年支払う100万円を利息と元本返済部分に分けなければならない。当たり前だが、契約上は「借入金」ではなく単なる使用料だが、リース会計上は負債とみなす必要があるのである。これを試算してみたものが、図表3である。

図表3 負債総額の計上の例

(出所)著者作成

この図表、5年間の支払リース料総額はちょうど500万円であるが、「仮に銀行などからおカネを借りるとしたら金利は2%」という(契約書にはどこにも存在しない)金利を見積もることが必要だ。そのうえで、5年間の支払リース料総額に含まれる利息相当額が286,540円と(自分で)算定し、したがって、リース負債を4,713,460円と(自分で)算定する、という流れである。

この負債サイドの処理もなかなかに面倒だが、それだけではない。

資産側でも、リース負債に▼リース開始日までに支払ったリース料、▼付随費用、▼資産除去債務に対応する除去費用、といった費目を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額を、使用権資産として計上しなければならない。そのうえで、経済的な耐用年数と合理的な残存価額を見積もり、減価償却を行う必要がある(※といっても、設例の「自動車」の場合だと、実務上は国税庁が公表する『主な減価償却資産の耐用年数表』などに基づき、耐用年数6年・残存簿価1円での定額法が使われることが多いと思われる)。

今回の事例では、付随費用や資産除去債務に対応する除去費用などがゼロだったと仮定し、リース期間終了後にリース物件の所有権が自社に移ると仮定したうえで、実際の会計処理を確認してみよう。上記リース負債がそのまま使用権資産として計上され、耐用年数6年の定額法で減価償却費を行うとしたときの会計処理のイメージが、図表4である(ただし、設例の都合上、残存価額を1円ではなく0円と置いているほか、四捨五入処理などで多少の矛盾が生じる可能性があるがご容赦いただきたい)。

図表4 オンバランス処理の場合の会計処理例

(出所)著者作成

これを、先ほど図表2で示した通常の賃貸借処理(オフバランス処理)と比べると、その煩雑性はあきらかだろう(図表5=図表2の再掲)。

 

図表5 通常の賃貸借処理(オフバランス処理)の会計処理例(図表2再掲)

(出所)著者作成

リスク・アセットの額は?

以上で見たとおり、これまでは「ファイナンス・リース」については原則としてオンバランス処理が求められる反面、「オペレーティング・リース」についてはオフバランス処理が認められていた。しかし、今般の新たな「リース基準等」では、リースは「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいう」と定義され、少額リースや短期リースなどの例外を除き、基本的にはオンバランス処理が求められると考えられる。

銀行等金融機関にとっても、自動車、店舗などを借りている場合は、事務負担もさることながら、不動産や固定資産などのオンバランス資産については、適用されるリスク・ウェイトが100%となるケースが多いと考えられる。2025年3月31日以降適用される新たな銀行告示の第77条によれば、標準的手法採用行の信用リスク・アセットの額については、告示第55条~第76条の5までの各条に当てはまらないエクスポージャーのリスク・ウェイトは100%とされているためである。

この新たな「リース基準等」は、とくに店舗などの不動産を賃貸借している金融機関にとっては、2027年4月以降に自己資本比率を低下させる隠れた要因となるかもしれず、もしかすると店舗の統廃合などを加速させる要因となるかもしれない、という可能性については、指摘しておく価値があるだろう。

新しいリース会計とは?

企業会計基準委員会(ASBJ)は昨年9月、『リースに関する会計基準』(以下「基準」)、『リースに関する会計基準の適⽤指針』(以下「指針」)および『適用指針設例』を公表した(本稿では便宜上、これらをまとめて「リース基準等」ないし「新しいリース基準等」と称したい)。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #会計・税制
前の記事
銀行自己資本比率規制におけるデリバティブの扱いをまとめてみる
2024.12.23
次の記事
リース会計がもたらす金融機能の低下リスク
2025.02.20

この連載の記事一覧

金融専門の公認会計士が示す 攻めの金融商品会計のアイデア

仕組商品のリスクは「複雑かつ複合的」なのか?

2026.06.25

実務で整理しなければならない仕組商品のリスク・ウェイト

2026.05.26

「5営業日以内にうっかり売買しちゃった」場合も慌てないで!

2026.04.23

責任準備金対応債券の指針改正案と減損処理の関係をめぐる誤解

2026.03.23

アセット・スワップと減損処理

2026.02.27

運用現場で知っておきたい大口信用供与等規制の「5%ルール」

2026.01.26

ECL計算方法は解釈の余地が大きすぎないか

2025.12.23

現状の貸倒引当金の問題点

2025.11.28

マーケット・リスク相当額の算出を新たに開始した銀行は「?行」だった

2025.10.24

「満期保有宣言を行えば減損回避可能」という謎のロジック

2025.09.25

おすすめの記事

「一連の治療が完了」――日証協日比野会長が半年ぶり記者会見で新事務年度の方針語る

川辺 和将

速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台

文月つむぎ

【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉝
パフォーマンスと高成長を背景に新興国株式ファンドに資金流入の兆し

藤原 延介

【プロが解説】人口減のなか注目される私鉄各社の貢献――駅を起点に人を呼び込み、沿線価値を高めるまちづくり

上野 武昭

政府が「地域金融力強化プラン」をブレークダウンした都道府県別“新プラン”を策定へ

川辺 和将

著者情報

岡本 修
おかもと おさむ
新宿経済研究所 代表社員社長 公認会計士
1998年 慶応義塾大学商学部卒業後、国家公務員採用一種試験(経済職)合格。中央青山監査法人(2000年)、朝日監査法人(現・あずさ監査法人)(2002年)を経て、2006年にみずほ証券入社。9年間、債券営業セクションにて金融機関を中心とするソリューション営業に従事し、2015年に金融商品会計と金融規制に特化したコンサルティング・ファームの合同会社新宿経済研究所を設立、現在に至る。株式会社Stand by C顧問。公認会計士開業登録(2004年)。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台
新NISA戦略を運用会社に聞く① 日興アセット、新しい投資家の開拓のためには対面窓口での対応がカギに
「一連の治療が完了」――日証協日比野会長が半年ぶり記者会見で新事務年度の方針語る
【ネット証券&対面証券72社編】投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング
「支店長! 正直なところ顧客本位と顧客満足の違いが分かりません」
大手証券では7月に日本株投信に「買い」、急落相場からのアクティブの回復力に期待
【プロが解説】人口減のなか注目される私鉄各社の貢献――駅を起点に人を呼び込み、沿線価値を高めるまちづくり
仕組商品のリスクは「複雑かつ複合的」なのか?
滋賀銀行で人気化の「ゴールド」と「インド株」、上昇勢いに乗る「順張り」と雌伏に賭ける「逆張り」の結果は?
速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
政府が「地域金融力強化プラン」をブレークダウンした都道府県別“新プラン”を策定へ
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で「日経225」と「NASDAQ100」が人気、貯金金利の引き上げで投信の売れ筋に変化?
【連載】藤原延介のアセマネインサイト㉝
パフォーマンスと高成長を背景に新興国株式ファンドに資金流入の兆し
【プロが解説】人口減のなか注目される私鉄各社の貢献――駅を起点に人を呼び込み、沿線価値を高めるまちづくり
仕組商品のリスクは「複雑かつ複合的」なのか?
「体制」から「態勢」へ、改正保険業法に見る金融庁の着眼点の変化
福岡銀行で「半導体」人気が爆発、「日本株」や「純金」の人気は後退
「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」に続くファンドは? 「スペースX」への関心で購入停止ファンドも=資金流入額上位20ファンド
速さを支える足場の築き方とは――moomoo証券の行政処分から考える「顧客本位」の土台
信託ならではの専門性をオンラインで実現 独自のハイブリッド型チャネル戦略を推進 case of 三井住友信託銀行
「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」
顧客の「将来」と「今」に価値を提供し、地域に好循環を生み出すのがFFGの使命 case of 福岡銀行/ふくおかフィナンシャルグループ
政府が「地域金融力強化プラン」をブレークダウンした都道府県別“新プラン”を策定へ
福岡銀行で「半導体」人気が爆発、「日本株」や「純金」の人気は後退
仕組商品のリスクは「複雑かつ複合的」なのか?
「体制」から「態勢」へ、改正保険業法に見る金融庁の着眼点の変化
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら