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「シン・NISA」への期待と不安。地銀の救世主か最後の一撃か

金融業界人のための「霞が関の歩き方」

finasee Pro 編集部
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2023.03.16
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「シン・NISA」への期待と不安。地銀の救世主か最後の一撃か

現状のNISAを大幅に拡充する「シン・NISA」が2024年にスタートする。多くの金融機関では新制度に対する期待と不安が交錯している。特に地方銀行では、シン・NISA の投資上限である1800万円を超える投信残高を持つ顧客数は「証券子会社を含めても2%未満」(西日本の有力地銀)にとどまるだけに、「ここでコケたら後がない」(同)というのが共通認識だろう。

NISAが恒久化され、しかもアクティブ投信を扱える成長投資枠が最大で1200万円に設定されたことで、対面中心の販売会社でも「NISAで収益を上げることが可能になる」(関東の大手地銀)との見方がある一方、「NISAで先行するネット証券に顧客が奪われるのでは」(北海道の地銀)との懸念もある。

高い稼働率と低い採算性、つみたてNISAが抱えるジレンマ

シン・NISAはつみたてNISAをベースにしているので、新制度の将来を想像する手掛かりにつみたてNISAの実態を見ておこう。この制度の特徴は稼働率の高さだ。有力地銀の同口座の稼働率は概ね8割、高いところでは9割を超える。採算が見込めないことで無理なキャンペーンをしなかったため「カラ口座が少ない」(別の西日本の地銀)ことが背景にあるようだ。

採算が見込めない点も特徴だ。主力のインデックス投信は販売手数料を徴収しないノーロードのうえ、信託報酬は極限まで低下している。売れ筋商品による販社収入は預り資産残高の5ベーシスポイント(0.05%!)を切るケースもある。シン・NISAの投資上限に当たる1800万円を有する口座でも収入は1万円に満たない計算だ(ただし、含み益のある場合はもっと多い)。

シン・NISAを基盤拡大の手段と割り切るのならともかく、このビジネスで収益を得ようとすれば、アクティブ投信を扱える成長投資枠に注力することになる。その際、商品戦略の最初の岐路は2つの枠の優先順位だろう。

まず、つみたて投資枠を使いインデックス投信である程度の資産を確保しつつ、成長投資枠にアクティブ投信を組み入れるのか。成長投資枠で採算性の高いアクティブ投信を提案し、余裕があればつみたて投資枠でインデックス投信も購入してもらうのか。いずれの場合もどんなアクティブ投信を用意するかが次の分かれ道になる。

提案はヤマほど、理屈は消化不良、運用会社からのプレゼン

成長投資枠に期待するのは運用会社も同じだ。彼らの提案は大まかに3つに分けられる。1つ目はシニア層向けに時価変動が抑えられるバランス型投信、2つ目は同じくシニア層向けに定期分配のある投信、最後はテーマ型やIT企業などに投資するものなど「夢を語れる」投信だ。つみたてNISAの対象から外れている米国の新興企業中心のNASDAQなどを対象指数とするインデックス投信も含まれるだろう。

ただし、それぞれ一長一短がある。バランス型投信は時価変動が緩やかな半面、投資対象が幅広いため商品説明に手間がかかるため、「制度説明だけでも大変なNISAで対応できるだろうか」(西日本の地銀の支店長)と現場は打ち明ける。値動きの面でも、「クッション」となる国内債券が超低金利の影響で役割を果たせない点を不安視する向きもある。

定期分配型の投信では、規制をいかにくぐり抜けるかが焦点になっている。シニアならば分配ニーズはありそうだが、毎月分配型は成長投資枠であってもご法度。そこで、有力地銀には多くの運用会社から「公的年金が出ない奇数月に分配するファンドはどうか」「いや、隔月分配はあざと過ぎる。四半期分配では」――などの提案がきている。もっとも、分配原資について尋ねると、「納得できる答えが返ってこない」(関東の大手地銀)という。

この種の商品の生命線である分配原資を詰め切る前に提案するのもどうかと思うが、理屈を固めるよりも「どうしたら当局に怒られないかに神経を使うので精一杯」(同)のようだ。

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