FIRE実現に必要な資金はトータルで「年間支出の30倍」

では、FIRE実現には、どのくらいの資金があればいいだろうか。

まず資金についてだが、「年間支出の25倍」を必要とするのが定説だ。これは「4%ルール」に基づいている。

前述の通り、FIREでは、用意した資金を投資元本として運用していくことが前提となる。仮にアメリカの株式市場成長率が7%、インフレ率が3%であれば、理論上の運用益は4%。4%ルールはこの運用益内に年間支出を抑えれば、資産が目減りすることなく生活できるという理論だ。

年間支出が総資産の4%ということから逆算すると、
必要な投資元本(100%) ÷ 1年間の支出(4%) = 25
となり、必要な投資元本は年間支出の25倍という数値になるわけだ。

また、書籍『FIRE 最強の早期リタイア術――最速でお金から自由になれる究極メソッド』(クリスティー・シェン 、ブライス・リャン 著)で提唱されているのが、「現金クッション」という考え方。これは運用資産とは別に5年分の生活費を市場の暴落に備えて預貯金しておくというもの。1930年代に発生した世界恐慌では、株式市場が立ち直るのに5年かかったことから、5年分のバッファを持たせておけば一安心という考えだ。

4%ルールから導かれた「年間支出の25倍」に加え「有事の際の預貯金5年分」、つまり「年間支出の30倍」があれば、FIREを達成できると考えていいだろう。

FIRE実現に向けたファイナンシャルプラン

では、そうした資金はどうやって作るのか。FIRE達成に必要なのは「1.支出を減らす、2.収入を増やす、3.資金を投資に回す」の3ステップだ。

まずは支出の見直しから。家賃や光熱費、食費などが節約ポイントになるだろう。より家賃の安い物件に住んだり、格安スマートフォンへ乗り換えたりして固定費を減らしていきたい。

年間支出が減れば、FIRE達成に必要な目標金額も変わってくる。前述した通り、目標金額は「年間支出の25倍」。そもそもの年間支出が少なければ、FIRE達成に必要な資金も少なくなるのだ。

次に収入を増やすこと。主な手段としては転職や副業などのキャリアアップが考えられる。資格や専門的なスキルがあると収入アップに繋がる可能性が高まるので取得を目指すのもいいだろう。ただし、未経験職種への転職は給与が下がる場合もあるので注意。現職での昇進が給与を増やす近道となる場合もある。

最後に投資。FIREの第一人者であるグラント・サバティエ氏は『FIRE 最速で経済的自立を実現する方法』で、戦略的な投資に必要な5つのコンセプトを挙げている。

・リスクを最小限に抑える ・リターンを最大化する ・手数料を最小限に抑える ・掛け金に対する税金を最小限に抑える ・お金を引き出す際の税金を最小限に抑える

この考え方は、「リスクを最小限に抑える」「リターンを最大化する」の2つに大別して考えるとシンプルだ。リスクを最小限に抑えるということは、株式・債券・不動産など異なる資産クラスに分散を効かせ、長期的に安定した投資をすること。

リターンを最大化するということは、「各種手数料や税金を必要以上に支払わないこと」「手数料の少ないインデックスファンドへの投資」「税優遇口座の利用をすること」だ。例えば確定拠出年金など税優遇のある口座を利用すれば、税金を払わずに給与から掛け金を拠出できる。

さらに、投資を一人で始められない場合にはファイナンシャル・アドバイザーに助けてもらうこともできると言及している。手数料や受けられる支援を確認し、必要に応じてアドバイスをもらうのもいいだろう。