近年、アメリカのミレニアル世代(20〜30代)を中心に広がりを見せている「FIRE」。背景にはこの世代が持つ「モノよりコト」の価値観があると考えられる。

ミレニアム世代はITバブル崩壊や世界金融危機を経験し、就職難や家計所得の減少といった影響を大きく受けた世代だ。スマートフォンの登場やTwitter、FacebookといったSNSの流行など、インターネットの隆盛期に育ったことから「デジタルネイティブ」とも呼ばれている。

インターネットを通じて世界とつながることが当然であり、働き方や生き方に画一的なイメージがない。さらに親世代よりも企業への信頼感が薄く、大企業への所属や資産の保有よりも、経験やその共有に価値を見出す。そんな彼らだからこそ、FIREの考えが浸透しやすかったのだろう。では、そもそもFIREとはどういった考え方なのだろうか。

そもそもFIREの定義とは? 従来のアーリーリタイアとの違いは?

「FIRE」は、「Financial Independence(経済的自立)」「 Retire Early(早期退職)」の頭文字をとった言葉だ。具体的には労働収入で生活していくのではなく、株式の配当や不動産の家賃収入など、不労所得の範囲内での生活を目指している。

一般的なアーリーリタイアとは、定年を待たずに会社員を辞めること。従来は老後を悠々自適に暮らせるだけの退職金をもらったり、親の資産を相続したりと経済的余裕を持つ人の特権のように考えられてきた。

これに対し、FIREには「比較的少ない資産で達成できる」「リタイア後も倹約生活を続ける」といった2つの特徴がある。

FIRE後は資産運用の収益を基本に生活していくことになる。そのため、十分な収益を見込める元手さえ用意できればよく、リタイア後に想定される生活費の全額をあらかじめ貯蓄しておく必要はない。従来考えられてきたアーリーリタイアのように、多額の退職金や相続資産がなくても達成できるのだ。

一方で、少ない資産でFIREを達成するには、FIRE後も計画的な支出が求めらる。家賃や食費などを削り、生活費をかけないことが重要だ。FIRE達成者には、自国より物価の安い国で生活することで日々の出費を抑えている人もいる。贅沢な暮らしを送るわけではないのもFIREの特徴だ。