保険の本質は「確率極小、リスク極大」な状況に備えること
社会人になると生命保険を勧められることが多くなります。
もちろん最近はセキュリティ上の理由もあって、職場の内部に保険のセールスの人が出入りすることは少なくなりましたが、それでもビジネス街の喫茶店やカフェで時間を過ごしていると、周りで保険の勧誘と思しきやりとりを耳にすることがあります。これから皆さんも「社会人になったのですから、保険に入るのは一人前の大人として当然です」とか「保険に入るのは社会人としての責任です」みたいなことを言われることもあると思いますが、これらは全くの間違いです。
結論から言えば、新入社員の人は生命保険に入る必要は全くありません。これは別に難しい話ではなく、保険というものの本質を正しく理解していれば誰にでも納得できることです。保険の役割は「めったに起こらないけど、もし起こったらとても自分の蓄えではまかなえないこと」に対応するためにあります。つまり「確率極小、リスク極大」に備えるのがその役割です。わかりやすい例でお話しましょう。
例えば自動車を運転する時には「対人賠償保険」は絶対に必要です。なぜなら死亡事故などは滅多に起きないけれど、もし起きてしまったら、とても自分のお金では賠償金を払うことなど不可能だからです。ところが車両保険の場合はどうでしょう? 対人賠償には必ず入る必要はありますが、車両保険は場合によっては不要と考えて入らない人もいます。その理由は自分の車を車庫入れの時にこすったり、ちょっとしたところにぶつけて凹ませたりすることは割とよく起きるからです。つまり保険というのは起きる頻度が高いほど保険料は高くなります。死亡事故の起きる確率は限りなく低いので、年間数万円程度の保険料で無制限の対人賠償がまかなわれるのです。
一方、対人賠償と違って、自分の車の修理代は最大でも自分が買った価格以上になることはありません。したがって、対人賠償のような「確率極小、リスク極大」の事態に備える保険は絶対必要ですが、「確率中、リスク中」というような車両保険の場合は、ケースによって保険料が高くなるので加入せず、もし自分の車が傷ついた場合は、自分の貯金を使って修理すれば良い、ということなのです。
では新入社員の生命保険はどうでしょう? 先ほどの「確率極小、リスク極大」という法則で考えると、入るべきなのは「若いけれど、結婚していて子供もおり、かつ奥さんが専業主婦で働いていない人」です。独身の人は全く入る必要はありません。生命保険というのは万が一、自分が死んだ時に経済的に困る人がいる場合に、入っておいた方がいいわけで、独身の場合は、自分が死んでも、悲しむ人はたくさんいるでしょうが、経済的に困る人というのはまずほとんどいないでしょう。そんな人が生命保険に入るのは全くのお金の無駄です。そんな保険料を払うくらいなら、その分は貯金をしておくべきです。