私が理事を務めるNPO法人確定拠出年金教育協会では、長年、企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している企業の担当者にご協力いただき実態調査をしています。今回は、制度運営にあたっている「担当者の悩み」にフォーカスしてみたいと思います。

企業型DCの担当者の悩みは「継続教育」がトップ

担当者の悩みは企業規模にかかわらず、「継続教育」「加入者の無関心」が1位2位を独占しています。導入時期別でみても、導入直後の企業を除けば上位の2つは同じです。


「企業型確定拠出年金(DC)担当者の意識調査2020全体報告書」内
Q2-SQ1.現時点におけるDC制度に関する一番の悩み(課題)の結果 

※人数は従業員数

継続教育については、法令だけでなく、その解釈通知※の中で伝えるべき項目や継続教育にあたって配慮すべき事項などが比較的詳細に書かれています。ただ、具体的にどういう手段で、何年ごとに何回受講させ、何を基準として「できている(または十分にできている)」と言ってよいかという判断のようなものは示されていません。
※確定拠出年金法令解釈通知(厚生労働省)

これは、企業規模や職場環境が違うので情報提供や教育機会も各社ごとにまったく違い、企業型DCが退職金に占める割合が10%というところと、100%というところではその重要性も異なることから一律の基準を決めないで欲しいという企業側からの声を受けて作られてこなかったと私は理解しています。

ただ、2016年の法改正で継続教育が努力義務になったことで「継続教育」への関心は高まり、継続教育を熱心に実施している担当者は「これで実施したと言っていいのだろうか?」と悩み、一方でこれまでまったく継続教育を実施していない担当者は「そもそも何をどうしたらいいのだろう?」と悩むようになり、最近は制度改善要望として「拠出限度額の引き上げ」よりも「継続教育の基準の明確化」を挙げる担当者も出てきています。