相談者のプロフィールとお金データ

【山口多佳子(仮)さんのプロフィール】 35歳、IT系企業で営業として働く。一人暮らし、都内在住。 「老後が不安!」と思い立ち、自力で調べて、3年前からつみたてNISAで投信を積立中。さらに、コロナショック期から米国個別株投資も始めた。
【寄せられたお悩み】  「夜な夜なニューヨーク市場をウォッチする日々に疲れました。米国株の大半を手放しつつ、時間のゆとりもできてその上 “ちょっと攻め”ることができる資産運用をしたいです……わがままでしょうか。 すでに、400万円の預金に加え、つみたてNISA月3万円、さらに会社の企業型DCで月1万5000円、と計4万5000円インデックスファンドを積み立てていて、いわゆる“コアサテライト運用※”で言うところの“コア(=土台)”は十分と思っています。 私にとって米国株はサテライトで、コロナショックの下落を見て、積極的にリスクを取りたいという考えと流行りに乗ってみたいという思いで始めました。 しかし、3カ月ごとの決算を確認したり、夜な夜なニューヨーク市場を覗いたり(決して毎日覗かなくてもいいのかもしれませんが、小心者なので見てしまいます。これは性格なので変えられないと思っています)、自分が売った直後にその銘柄の株価が跳ね上がったのをみて『私ってなんてタイミングが悪いんだろう』と落ち込んだり……。疲れてしまいました。 そこでご相談です。インデックスファンド以上にリスクはとれて、でも毎夜マーケットを見なくてもいい“ほったらかし”もOK、そんな金融商品はありますか? 私なりに調べて、恐らくアクティブファンドでは?と思うものの、インデックスファンド以上に商品が溢れすぎていて、分かりません」 ※安定的な運用を目指す土台となる部分(コア)と、もう少しリスクをとって積極的な運用をする部分(サテライト)の2つに分ける考え方
【お悩みの論点】 ①米国株の所有に疲れたので、売却をしたい ②売却した資金で、インデックスファンド以上にリスクはとれるが“ほったらかし”が叶う金融商品=アクティブファンドで運用がしたい ③アクティブファンドは種類がありすぎる……。どう選んだらいい?

資産状況

【資産状況】 金融資産額(運用中の投資額と預貯金を合わせた金額):590万円 ※企業型DCの資産はここに含まない。
内訳 米国株:約100万円 預貯金: 400万円 投資信託: 90万円 ※つみたてNISAでeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を運用中 ※ちなみに、相談者には不動産・実物資産の所有はない。

国内外の債券やリートにも分散投資を

ご相談いただき、ありがとうございます。
さっそくですが、まずは本題に入る前に上記の山口さんの資産状況等から以下の4つのポイントを確認してみましょう。

① ライフプランニング
② ファイナンシャルプランニング
③ 資産の状況(不動産・金融資産・実物資産)
④ 金融資産のポートフォリオ

①のライフプランニングとしては、結婚や出産も考えられますが、ここでは当分の間お一人暮らしを前提にお話を進めていきたいと思います。

②のファイナンシャルプランニングですが、一般的にリタイアされる65歳まであとちょうど30年。毎月つみたてNISA3万円+企業型DC1.5万円=4.5万円の積立を続けることができるとして、30年間で4.5万円×12ヶ月×30年=1620万円が投資元本となります。仮に年率3%で複利運用をすることが出来た場合、30年後には約2622万円となります。ぜひ年率3%の運用を目指したいですね。

ご自身でもおっしゃる通り、「コアサテライト運用」というところの「コア(=土台)」に関しては、つみたてNISAと企業型DCで十分ではないでしょうか。将来の退職金を含めると、65歳時点の金融資産は4000万円以上となっている可能性が高いでしょう。病気・ケガ・事故など、不測の事態がなければ、立派なファイナンシャルプランニングになっていると思います。ただ、ライフプランにもいろいろな変化が訪れると思いますので、それぞれのタイミングで適宜ポートフォリオを見直す必要がある点にはご注意いただければと思います。

③の資産の状況は、本来であれば不動産や実物資産も含めて対策を考えなければなりませんが、所有していないということで、今回はお悩みの金融資産に絞ってお伝えいたします。

さて問題の④金融資産のポートフォリオですが、590万円のうち190万円がリスク性資産、400万円が元本保証の安定性&流動性資産となります。

リスク性資産190万円のうち、米国株式に100万円、90万円が世界の株式に投資するものであるため、現状は金融資産に占める海外株式の割合が約3割となっています。これは35歳としては決して高い割合ではないと思います。さらに本来であれば、日本株式や国内外の債券、さらには国内外のリートにも分散投資された方が良いのではないでしょうか。

ただ、今回は米国個別株の保有に疲れ、アクティブファンドでの運用をご希望とのことですので、そちらにフォーカスしてみたいと思います。

多忙な日々を送る人にとって、個別銘柄からアクティブファンドへのスイッチは良い選択

株式個別銘柄に投資をされますと、どうしても日々株価が気になってしまうと思います。私の知り合いの中でも、FXを利用して為替に投資された方がいらっしゃいますが、真夜中にも為替のことが気になって仕方なくなり、十分な睡眠をとることが出来ず健康を害してしまいました。これでは、「健康で豊かな老後のための資産運用」という趣旨から大きく逸脱しており、本末転倒ですね。

お仕事もお忙しいことでしょうから、個別銘柄からアクティブファンドへスイッチされるのは良い選択だと思います。ちなみに、アクティブファンドというのは、日経平均・TOPIX・NYダウ・S&P500のようなインデック(指標=ベンチマーク)を上回るパフォーマンスを目指す投資信託のことです。インデックスを上回るパフォーマンスを挙げているファンドを長期的に保有し、積み立てることは大変メリットが大きいと思います。

アクティブファンドの魅力には以下の3つが考えられます。
①プロのファンドマネージャーが運用する
②各ファンドマネージャーの「哲学」を感じ取り、それを選択することができる
③インデックスを上回るパフォーマンスを期待できる

あるファンドマネージャーの方が運用報告セミナーでお話されていたことが強く印象に残っています。
「日本全国に展開するチェーン店で食べれば、味は安定しているし失敗はしないかもしれない。しかし、あの店のあの味が忘れられない!そんなファンドマネージャーになりたい」。独自の「哲学」を持っていらっしゃるのがよく分かりました。このようなファンドマネージャーによる運用に期待できるところが、まさにアクティブファンドの魅力です。

私も「このアクティブファンドは、こんな銘柄を組み入れているんだ、それもこんなに高い比率で!」と月次報告書をチェックしたときに時々感じることがあります。ファンドマネージャーは多くの経営者に会ったり、工場を視察したり、店舗を調査したりしています。彼らは、「投資対象となる企業が利益を上げ続けることができるのか」という点を非常に大切にしています。そのファンドマネージャーが綿密・緻密に調査した銘柄が圧倒的なパフォーマンスをたたき出すという点がアクティブファンドの最大の魅力なのです。

儲かっていない企業もすべてまとめて投資するインデックスファンドとは明らかにスタンスが違うわけですね。ただ、アクティブファンドの中にもインデックスを上回るパフォーマンスを出すことができない投信が多く存在する点には注意が必要です。

数多くあるアクティブファンドから、納得のファンドを見つけるためのポイント

次に、アクティブファンドを選ぶ際のポイントについてお伝えしたいと思います。
「ありすぎる……」とおっしゃる通り、たくさんあるアクティブファンドからご自分のご意向に合った投信を選ぶのはなかなか難しいのではないでしょうか。
以下にアクティブファンドを選ぶ際のポイントを列記しましたので参考にしていただければと思います。

●純資産残高
極端に少ない(20~30億円以下)投信や純資産残高が中期的に減少傾向にある投信は、思い通りの運用が出来ず繰り上げ償還の可能性があるためなるべく避ける

●設定日
新規設定や設定してまだ日の浅い投信はデータ不足のためなるべく避ける

●パフォーマンス
直近の1年間だけではなく、継続的にインデックスを上回るパフォーマンスを挙げている投信を選ぶ

●ファンドマネージャーの「哲学」
どのような基準で銘柄を選定しているのか

●組み入れ上位10銘柄の傾向
特定の銘柄に絞っているのか多岐に分散されているのか、入れ替えが頻繁なのかほとんど変わらないのか等

●分配金の有無
長期投資の場合、複利効果を高めるためにもなるべく分配金のない投信を選んだほうが良い

●信託報酬(保有時のコスト)
なるべく低いものを選びたいところだが、そのファンドの「哲学」に納得できれば、あまり気にしなくても良い

また、これらを調べる際に参考になるのが、
① 運用会社のホームページ
② 月次報告書(マンスリーレポート)
③ 運用報告書
④ 定期的に行われる報告会
などになります。

いくつかのアクティブファンドの月次報告書をチェックしてみてください。組み入れ銘柄の変化や、インデックスとのパフォーマンスの差などを確認していただくと、そのファンドの特徴がつかめるのではないでしょうか。

最後に、過去のデータを比較検討したいときなどには、モーニングスター社等投信評価会社のホームページが大変参考になると思います。

ぜひ以上のポイントを参考にしていただき、アクティブファンドを選んでいただければと思います。ファンドマネージャーという目利きに運用をお任せしつつ、山口さんは健康な暮らしを送る――その一助になることを祈っています。