50代サラリーマンは“退職金逃げ切り世代”!?

定年が視野に入ってきたサラリーマンの中には、老後資金の柱として会社の「退職金」を当てにしている方が少なくないのではないでしょうか? 日本では一般的な退職金ですが、実は会社を辞める際にまとまったお金が受け取れるという制度自体、海外では珍しいようです。それもあって、経営のグローバル化が進むにつれ、近年は退職金制度を廃止する企業が増え、退職金の金額も減少傾向にあります。

そんな中、昔ほどではないにせよ、相応の金額を手にすることができる今の50代は、“退職金逃げ切り世代”とも言えます。だからこそ留意したいのが、退職金の受け取り方法です。
通常なら「一時金(一括)」「年金(分割)」「一時金・年金併用」などいくつかの選択肢が用意され、その中から指定できるのですが、選び方次第で「受取総額」や「実質受取額」が大きく変わってくることをご存じでしょうか?

「受取総額」では年金、「実質受取額」では一時金に軍配

「受取総額」の面で有利なのは、年金形式です。年金で受け取る場合は定年後も会社や企業年金が引き続き運用を続ける格好となり、その運用益が上乗せされるため、一時金形式より受取総額が増えるのです。現状、運用利率は1~2%というところが多いようです。
しかし、税金や社会保険料を差し引いた「実質受取額」となると話が変わってきます。新卒や第二新卒で入社した会社で定年まで勤め上げたという人だと、一時金形式が有利になる可能性が大きいのです。

これは、一時金で受け取る際に「退職所得控除」が適用されるためです。退職一時金は税務上、通常の給与や賞与とは別の扱いになります。課税される退職所得は「(退職金-退職所得控除)×2分の1」で計算され、退職所得控除は勤続20年以下が「40万円×勤続年数(控除額が80万円未満の場合は80万円とする)」、同20年超が「70万円×(勤続年数-20年)+800万円」です。

大学卒業後、新卒で入社して60歳で退職する人(勤続38年)なら、退職一時金は2060万円まで税金はゼロということになります。ちなみに、退職所得には社会保険料もかかりません。

これに対し、年金で受け取る場合は雑所得扱いとなり、公的年金などと合算の上、課税所得が計算されます。60~64歳の間は年間で60万円、65歳以上は同110万円の「公的年金等控除」があり、年金収入がそれぞれの控除に基礎控除(48万円)分を加えた108万円(60~64歳)、158万円(65歳以上)の範囲内なら非課税です(いずれも、公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1000万円以下の場合)。