新型コロナウイルスによる経済危機で、日本銀行の米国版とも言われるFRB(The Federal Reserve Boardの略称/連邦準備理事会)は2020年3月にゼロ金利政策と、市場に大量の資金を供給する量的緩和政策を復活。日銀が実施したETFの買い入れと同様、下落した株価を下支えする役割があると言う。特にゼロ金利政策の復活は、2015年以来、約4年ぶりとなる。
そしてFRBは9月16日に、少なくとも2023年末まではゼロ金利政策を維持する方針を表明。2020年11月5日には、ゼロ金利政策を含むコロナ危機対応の金融緩和の維持を、正式に決定した。
世界中のマーケットに多大な影響を与えるとも言われるFRBの発表。それゆえ、経済ニュースなどでも耳にする機会が多い単語の一つかもしれない。
FRB議長の発言によっては、NYダウ平均株価や各国為替相場は大きく上下することもある。そして日本株は米国株に連動するケースが多く、FRBの動向は日本市場においても関心を集める。そんなFRBについて、果たすべき使命や日本株への影響を改めて解説していきたい。
FRBの目的は「物価の安定」と「雇用の最大化」
FRBはアメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関で、日本における日銀に相当する機関だ。
FRBは議長1人、副議長1人を含む7人の専任理事で構成。いずれも、大統領の指名によって就任する。ちなみに現在のFRB議長は、第45代大統領のドナルド・トランプ氏に任命されたジェローム・パウエル氏が務めている。
そんなFRBには、果たすべき使命が2つ存在する。
それは「物価の安定」と「雇用の最大化」だ。連載1回目の『実体経済悪化でも株価は上がる不思議な現象と「日銀ETF買い」の関係』の記事でも触れたが、物価の安定は日銀も掲げる使命だ。さらにFRBは、雇用の最大化を実現するために金融政策を実施している。
2008年以降、FRBが行う金融政策と、政府が行う財政政策で米国はリーマン・ショックによる景気後退から抜け出そうとしてきた。金融政策においては金融機関の預金金利や貸出金利などに影響を及ぼす「政策金利」を大幅に下げ(実質的なゼロ金利政策)、資金繰りに苦しむ米国の企業がお金を借りやすくした。さらに大量にお金を発行することによって企業や個人にお金が行き渡り、消費や設備投資、雇用の創出などが活発になるよう促した。
こうした金融政策を実施したのも、FRBの使命である物価の安定と雇用の最大化が、リーマン・ショックによって損なわれたためだ。特に景気後退によって企業の雇用は大きく縮小し、多くの人が職を失った。
リーマン・ショックのような経済危機を抜け出すため、政府とFRBが何かしらの政策を実施するのは一見、当たり前のように感じるかもしれない。しかしFRBに関してはあくまでも、前述した2つの使命を果たすために行動していると言える。