渡米後待ち受けていたベネフィット・パッケージの理解という大仕事

さてさて、夫は先のテニュア制度のプレッシャーでハナから頭がいっぱいでした。仕事以外のことは全くと言っていいほど気にかける余裕がありません。結果、それ以外のことはすべて私の担当となりました。まず大きな仕事は、大学のベネフィット・パッケージの理解でした。

ベネフィットというのは福利厚生のことで、リタイアメント積立制度、健康保険、生命保険、所得補償保険、その他税優遇を受けながら利用できるプログラムなどなど、バサッと分厚い文書を渡されました。「それを読んで好きなものを選択するように」とのことです。何もかもが新しいシステム、新しい情報ですから、読んで理解するだけでも大変です。加えて「選択する」というのがさらに大きな問題でした。まず持った感情は“恐怖”でした。人間、よく分からないことを選ぶほど恐ろしいことはありません。。

選択の量もハンパではありませんでした。たとえば、リタイアメント積立制度でも、403(b)という名の、言ってみれば企業の401(k)※4の大学版のようなものと、加えて457という州のリタイアメント制度(その大学は州立大学だったので)も使えます、とあります。さらにいくらずつ積み立てたいか決めて、どちらか一つで運用してもいいし、両方使ってもいいとあります。それを決めると、今度はどこの金融機関を使いますかといって、それぞれ3つくらいの選択肢があります。そして金融機関を選ぶと、その機関が提供している投資運用ファンドが15種くらい出てきて、これを必要に応じて好きなものを選び好きな比率で運用してください、とあります。最後には必ず「将来受け取れる額はあなたの運用成績次第ですから、額の保証はありません」と、ただし書きがあります。その時点で、投資運用というものをしたことがなかった私は(もちろん夫も)、頭の中はただただ真っ白です。

※4編集部注:401(k)とはアメリカの確定拠出型年金制度。雇用主が福利厚生の一部として提供するもので、加入は雇用主を通して行う。掛け金は従業員の給料から、また多くの場合、企業からも従業員の拠出額に応じて一定額拠出される(マッチング・プログラム)。株式や投資信託などの運用方法から従業員が自由に選択して、運用指図を行う。