自国通貨の防衛は、いずれ限界を迎える時がくる

それにしても、トルコの通貨当局はなぜオフショア市場の資金供給を極端に絞ったのでしょうか。

オフショア市場は実需の資金調達ニーズもありますが、同時に投機筋が特定通貨を売り浴びせるために、その対象となる通貨を調達するケースもあります。つまり投機筋は、将来的にトルコリラはさらに下がるというシナリオのもと、オフショア市場で調達したトルコリラを外国為替市場で売り浴びせている可能性があるのです。それをトルコの通貨当局は分かっているので、オフショア市場でトルコリラを調達しにくくするため、資金供給を極端に絞ったと考えられます。

しかし、自国通貨の防衛には限界があります。本来、トルコリラ安が進まないようにするには、トルコの通貨当局が外貨準備から引き出した外貨を売って、トルコリラを買うというオペレーションを行いますが、外貨準備は無尽蔵ではありません。つまり自国通貨防衛のための自国通貨買いは、どこかで必ず限界を迎えます。この限界点をある程度見通すことができ、かつ売り崩せるだけの資金力があれば、投機筋は一国の通貨当局が相手でも戦いを挑んできます。

もっと言えば、インフレ国の通貨は理論的にも売られます。インフレは通貨価値の下落と同義だからです。12%のインフレ率であるトルコの通貨が、デフレ大国日本の通貨である円に対して売られるのは、自明の理と言ってもよいでしょう。それは、トルコがインフレを抑え込む日まで続きます。

確かに表面上、10%を超える利回りの債券は魅力的に見えるのかもしれませんが、一方で通貨価値の下落が進み、最終的にトントンで終わってしまうことも十分に考えられます。高金利通貨に投資する際は、常に通貨価値の下落リスクと背中合わせであることに留意しておきましょう。