投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、三井住友銀行。

三井住友銀行の投信売れ筋ランキング(販売額・1カ月)の2026年9月のトップは、前月に続いて「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)だった。第2位の「三井住友・225オープン」、第3位の「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」、第4位の「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」まで前月と同じ順位を維持した。第5位には前月第6位の「世界のベスト(年1回決算型)」が上昇し、「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」は第6位に後退した。注目されるのは「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が第8位から第7位に上昇したことだ。また、第9位には「ライフ・ジャーニー(かしこく育てるコース)」、第10位には「エス・ビー・日本株オープン225」がトップ10圏外からランクインした。

※三井住友銀行サイトのファンドランキングから「販売額」「1カ月」に基づいて編集部作成。期間は2026年9月1日~9月30日。
https://fund.smbc.co.jp/smbchp/main/index.aspx?F=fnd_rank_sales_1m

10%超の値下がりでも「ゴールド」が順位上昇

三井住友銀行の9月の販売額ランキングでは、株式インデックスファンドの順位に大きな変化がなかった。9月の株式市場は、金利上昇や為替変動の影響を受けて不安定な動きとなった。米国の「S&P500」は月間で0.45%下落し、日本の「TOPIX(東証株価指数)」も1.15%下落した。一方、「NASDAQ総合」は1.86%上昇、「日経平均株価」も0.67%上昇した。ただ、9月には日銀の利上げ加速観測を背景に円高が進む場面があり、為替ヘッジを行わない外国株式ファンドには逆風となった。

実際に、9月の月間リターンは「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」(設定は三井住友DSアセットマネジメント)がマイナス2.12%、「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン」(同)がマイナス5.64%、「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」(同)がマイナス3.08%だった。「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」も(同)マイナス3.03%と、外国株式インデックスファンドはそろってマイナスになった。

これに対し、国内株式の「三井住友・225オープン」(同)はプラス1.23%だった。国内株式ファンドの成績が相対的に良好だったものの、販売ランキングでは外国株式ファンドから国内株式ファンドへの大きなシフトは見られなかった。

この背景には、株式インデックスファンドを中長期の資産形成の中心に据える投資家が増えていることが考えられる。9月末時点の過去5年間のトータルリターンは、「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」が160.68%、「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」が141.63%、「三井住友・225オープン」が142.99%と高い水準にある。こうした実績が、短期的な相場の変動に左右されずに購入を続ける背景にあるのかもしれない。

一方、「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」(ピクテ・ジャパン)が前月第8位から第7位へ順位を上げた。同ファンドの9月の月間リターンはマイナス10.02%と大幅な下落だった。それにもかかわらず販売額ランキングで順位を上げたことは、投資家が短期的なパフォーマンスとは異なる観点からゴールドを評価している可能性を示している。ゴールドは株式や債券とは異なり、企業業績や利払いを裏付けとする資産ではない。利息や配当を生まない一方、インフレや地政学的リスク、金融市場の混乱などに備える資産として注目されることがある。株式市場の先行きに不透明感が強まる局面では、資産の一部をゴールドに振り向けようとする投資家が増える可能性がある。

9月は日本の新発10年国債利回りが一時3.015%まで上昇し、米国でも長期金利が上昇した。米国ではAI関連株が下落する場面もあり、株式市場の先行きに対する警戒感が生じやすい環境だった。こうしたなか、株式とは異なる値動きを期待できるゴールドへの関心が高まったという見方もできる。

もっとも、ゴールド自体も価格変動の大きい資産であり、9月の10%を超える下落がそのリスクを示している。また、為替ヘッジなしのファンドでは円高も基準価額を押し下げる要因となる。ただ、中長期の運用実績を見ると、「ピクテ・ゴールド」の9月末時点のトータルリターンは過去1年間が14.16%、3年間が126.96%、5年間が221.05%だった。過去5年間では主要な株式インデックスファンドを上回るリターンを残している。したがって、今回の順位上昇は、株式市場への不安からゴールドを購入する動きだけでなく、大幅な値下がりを投資機会と捉えた押し目買いの可能性もある。

債券の入った「ライフ・ジャーニー」復活は投資家心理の変化か

もう一つ注目したいのが、第9位にランクインした「ライフ・ジャーニー(かしこく育てるコース)」(愛称:最高の人生の描き方)(三井住友DSアセット)だ。同ファンドは2026年4月にトップ10から姿を消し、8月まで5カ月間ランキング圏外だった。9月は久しぶりのトップ10復帰となる。

「ライフ・ジャーニー」は世界各国の株式、債券、REITなどに分散投資するバランス型ファンドで、短期金利相当分に年3%程度を上乗せしたリターンを目標としている。2026年8月末時点の資産配分は、国内株式14.8%、外国株式44.7%、国内債券6.0%、外国債券22.3%、REIT11.6%となっている。株式だけでなく債券や不動産にも投資することで、中長期的な資産形成を目指す商品だ。

ただ、9月の運用成績は決して良好ではなかった。月間リターンはマイナス3.11%で、株式、債券、REITのすべてがマイナスに影響した。特に配分比率の大きい外国株式と外国債券の下落が基準価額を押し下げた。

中長期の実績も、株式インデックスファンドと比べると控えめだ。9月末時点のトータルリターンは過去1年間が12.19%、3年間が43.74%、5年間が48.35%だった。過去5年間で160.68%の「S&P500」連動型ファンドなどと比較すると、リターンには大きな差がある。

株式市場が好調な局面では、高いリターンを上げる株式インデックスファンドに投資家の関心が集まり、分散投資によって値動きを抑えることを目指すバランス型ファンドは相対的に目立たなくなりやすい。しかし、株式市場の先行きに不透明感が強まると、リターンの大きさだけでなく、複数の資産に分散することの意義が見直される可能性がある。「ライフ・ジャーニー」が5カ月ぶりにトップ10に復帰した背景にも、こうした投資家心理の変化があるのだろうか。

「ピクテ・ゴールド」の順位上昇と「ライフ・ジャーニー」のトップ10復帰が同時に起きたことは興味深い。株式インデックスファンドへの投資を継続しながらも、株式とは異なる資産や分散投資型の商品にも目を向ける投資家が現れている可能性がある。今後、こうした動きが一時的なものにとどまるのか、投資家の資産配分の変化につながるのか注目したい。

執筆/ライター・記者 徳永 浩