中東リスクのダメージは大きめ 主力の自動車船で「荷動きが喪失」の深刻影響

続いて、川崎汽船に焦点を当てましょう。中東情勢の悪化は、エネルギー船やコンテナ船には追い風となっていますが、自動車船事業には逆風となっています。川崎汽船は、この影響を比較的大きく受けている点に注意が必要です。

まず、川崎汽船は利益の多くが自動車船やコンテナ船といった製品物流事業であり、今期の予想経常利益の8割を同事業が占める計画です。一方、日本郵船はドライバルク船やエネルギー船にも分散しているほか、商船三井はエネルギー船・ケミカル船に軸足を置いています。

【海運大手3社の予想製品物流セグメント経常利益(27年3月期)】
・川崎汽船:1090億円(対連結経常利益80.7%)
・日本郵船:1640億円(同65.6%)
・商船三井:1080億円(同48.0%)
※川崎汽船は製品物流事業、日本郵船は定期船事業と自動車船事業の合計、商船三井は製品輸送事業
出所:各社の決算説明資料

そして、川崎汽船はその自動車船事業において中東情勢の悪影響を強く受けています。同社の今期(27年3月期)第1四半期における自動車船事業の経常利益は前年同期比86.2%減となり、日本郵船(同41.7%減)よりも大きく悪化しました。同事業の通期見通しも、日本郵船が前期比15.4%の減益を見込む一方、川崎汽船は同20.7%減の予想となっており、落ち込みが相対的に強い状況です。

日本郵船は、足元の自動車船事業において、コストがかさんだものの輸送台数は前期並みを確保しました。一方、川崎汽船は「中近東向けの荷動きが失われた」とコメントしており、売上そのものが喪失したことがうかがえます。さらに、「湾内に留め置かれた船」があったことで船隊の回転率が低下し、それを補うために追加の運航コストをかけて回転率を上げる施策を取らざるを得なかった、傭船料も高止まりしていて費用が先行した、という三重苦の状態でした。

川崎汽船は、依存度が高い製品物流において、中東情勢の負の面を相対的に強く受けた格好です。また、川崎汽船は事業規模も他の2社と比べると小さく、特定セグメントの不振が全社に与えるインパクトが大きくなりやすい構造もあります。中東情勢の悪化が長引いた場合、他の2社よりも業績が下振れするリスクが大きいといえるでしょう。