タングステン高騰の好影響いつまで? 安価在庫は今期中に払底へ 製品事業では優位性も
今期(27年3月期)の大幅増益の主因は、タングステンにおけるスプレッド(原料と販売の価格差)の改善です。しかし、今後はこの効果が薄れる懸念もあります。今期の見通しにおけるタングステンの原料価格には、値上がり前に仕入れた安価在庫が影響しているためです。
仕入れた原料は、生産に伴って順次払い出されていきます。三菱マテリアルによると、タングステンの低価格原料在庫による利益の押し上げは、今期の第4四半期以降に縮小する見通しです。
さらに、追加の仕入も行っているため、在庫は入れ替わっていきます。原料市況が横ばいに推移した場合、原料価格は市況に近づいていく構図です。タングステン価格は高止まりが続いており、足元の新規の仕入は高値圏で行われていることが予想されます。今後もその状況が続けば、今期のようなスプレッドには期待できないかもしれません。
一方で、三菱マテリアルはリサイクルでの調達も大きく、タングステンの生産においてリサイクル率は2024年に50%超に達しています。調達先は分散されているため、市況の上昇がスプレッドの縮小に直結するわけではありません。
また、自社で一貫した生産機能を持っていることも、需給がひっ迫する環境では優位に働きやすいでしょう。三菱マテリアルは超硬工具といったタングステン製品のメーカーでもあります。素材を外部から調達する競合は生産に制約を受けることが予想されますが、三菱マテリアルは上流から下流までの生産工程を自社グループでまかなっており、相対的に安定した供給が可能です。
まとめると、タングステン価格の高止まりは、素材事業サイドから見ると三菱マテリアルにも不透明感を与えますが、製品事業サイドでは優位性に貢献しやすい要因です。同社はリサイクルも活用した生産が可能であり、コスト競争力の高まりからシェアの拡大にも期待できます。
三菱マテリアルは、さらにリサイクル能力を高める方針です。同社は26年9月、リサイクル能力の強化を発表しており、APT生産能力を従来比2倍に引き上げると表明しました。今期から設備の拡張を進め、29年4月の本格稼働を目指す計画です。
