お金には代えられない成果に、満足感も
世帯年収700~800万円で私立中学へ通わせることは、決して楽なことではありません。佳子さん一家のように、住宅費を抑え、子どもがひとりで、家族全員が同じ目標を共有していても、余裕のない月はあります。
また家計にはそれぞれ事情があるので、同じ年収でも住宅費、子どもの人数、祖父母からの援助、貯蓄額によって、教育費に回せる金額は大きく異なります。佳子さん一家の選択が、すべての家庭に勧められるわけではありません。
それでも佳子さんは、娘を見ていると、「受験してよかった」と思うそうです。
「娘は学校で、自分とは育った環境も価値観も違う友達に出会いました。海外で暮らした経験のある子、起業したいと話す子、音楽やスポーツに打ち込む子。家庭のお金の使い方には驚くことがあっても、娘自身はその違いに触れ、将来の選択肢を広げています。
お金がなければできない経験は、確かにあります。でも、あの学校に入ったことで、知らなかった考え方や生き方に出会えた。娘の世界は、確実に広がりました。それが私はうれしいです」
中学受験では、とかく「世帯年収いくらなら可能か」という線引きについて語られます。もちろん、入学後まで払い続けられるかを冷静に見通すことは不可欠です。
けれど、教育のために注げるものは、お金だけでもありません。時間、手間、家族の協力、そして子ども自身が塾や学校を使い切るという気概。サポートを外注できない家庭だからこそ育つ力もあります。一方で、努力だけでは越えられない経済的な壁があることも事実。佳子さん一家の物語を、節約さえすれば誰でも私立へ行けるという美談にしてはいけないでしょう。
数字と向き合い、家族で選び取った道なら、その過程もまた、子どもの世界を広げる教育になるのだと思います。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。