「相続放棄の手続き」が必要
行政書士の話を聞き、事の重大さに気づいた健一さんは、理恵さんや叔母の明美さん、京子さんに連絡を取り、相続放棄の手続きを進めることになりました。
相続を放棄することを決めた際には、その旨を記載した申述書を作成し、家庭裁判所に提出する必要があります。
それらの書類を作成し、提出して受理された後にも、家庭裁判所から送付されてくる照会書(及び回答書)に質問事項を記入し、再び返送しなければなりません。
ご自身での対応が難しい場合には、弁護士や司法書士などの専門家に対応を依頼するという方法もあります。
【相続放棄の際に必要な書類】
・相続放棄申述書(家庭裁判所のホームページなどにフォーマットがある)
・被相続人の住民票除票または戸籍の附票
・相続放棄する方の戸籍謄本(本籍地のある役所で取得)
・収入印紙
・ 切手(家庭裁判所から通知を郵送する目的で使用)
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
手続きをすれば支払わなくていい
健一さんと理恵さんは協力して、手続きを開始しました。2人の叔母とも連絡を取りながら、相続放棄の申述書や照会書を何とか書き上げ、提出しました。
その後、家庭裁判所から相続放棄を受理した旨の通知を受け取り、健一さんと理恵さんは胸を撫で下ろしました。
「祖父が建てた家とはいえ、存在すら知らなかった物件の解体費用を請求されてはたまったものじゃないな……」健一さんは思いました。
これまでの民法では、相続を放棄した後に誰が管理責任(※改正民法では「保存義務」に変更)を負うのかについて、明確な基準が設けられていませんでした。
そのため、相続を放棄したはずなのに、相続人が解体費用などの金銭面の負担など、多大な責任を負うケースも見られました。
ただ、2023年4月に施行された改正民法では、空き家を占有していない相続人については管理責任が生じないことが定められています。そのため、相続放棄の手続きさえしておけば、原則として空き家の解体義務や管理責任から解放されることになりました。
なので、今回のケースでは、健一さんと理恵さんが解体や撤去の費用を支払う必要はありません。
空き家の相続に関する連絡があった場合には、縁のない土地であったり、身に覚えがなかったとしても、送付先の役所などに問い合わせて真偽を確認し、必要な手続きをなるべく早めに行うようにしましょう。
※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。