日本では「空き家」をめぐるトラブルが増えています。少子高齢化の影響で、2003年に約202万戸だった空き家は、2023年には約386万戸まで増加しています。

空き家は相続と深い関係がありますが、空き家トラブルが深刻化する背景には、相続人同士のいざこざが関わっていることも多いのです。その一例をご紹介しましょう。

周囲に流され「空き家」を相続した男性

東京の大手商社に勤務する山田健一さん(仮名、56歳)は、5年前に母親を亡くしたあと、長く闘病を続けていた父親も相次いで亡くしました。

その結果、山田健一さんは、妹の理恵さん(仮名、49歳)と共に、長野県にある実家を相続することになったのです。

父の逝去から程なくして、「実家を今後どうすべきか」という具体的な話し合いを行いましたが、健一さんと理恵さんは互いの主張をぶつけ合うばかりで、話し合いは平行線を辿ったのでした。

健一さんは、相続登記を経たうえでの実家の売却を主張しました。固定資産税や、老朽化が目立つ物件の修繕維持費の支払いに追われることを懸念していたからです。

一方、理恵さんは「生まれ育った家が無くなるのは寂しいから……」と、これを拒否。

相続には直接関係のない叔父たちも、「私たちの思い出が詰まっている」「戻る場所があると嬉しい」「これ以上寂しい思いをさせないでほしい」などと、理恵さんの言い分に次々に共感したことで、健一さんは旗色の悪い状況に追い込まれたのです。

健一さんは穏やかで「いい人」として知られていました。時には自分を犠牲にしてまで人のために尽くすようなところもあったそうです。

そんな健一さんは、理恵さんの実家に対する思いの強さに触れ、自身の主張を貫き通すことに迷いを覚えます。

最終的には、健一さんは主張を取り下げ、理恵さんと二人の共同登記で、誰も住む人がいない実家を相続することになりました。

こうして、空き家が一つ増えることになったのです。