40万円近い立て替えを知る直樹
夕食後のリビングには、珍しく直樹も残っていた。結衣は風呂に入っており、悠斗も自室にいる。直樹はしばらく尚子の様子をうかがったあと、向かいの椅子に腰を下ろした。
「母さん、今日、結衣と何かあった?」
「どうして?」
「なんか2人とも変だから。結衣もほとんどしゃべらないし」
尚子はどう答えるか迷った。仕事で疲れている直樹に、夫婦ゲンカの種を持ち込みたくはない。だが昼間、自分で「もう曖昧にはしない」と決めたばかりだ。ここでまた黙ってしまえば、今までと何も変わらない。
「今日ね、車を買い替えようと思ってるって結衣さんに話したの」
尚子は、中古車で十分だと言われたこと、その分を夏休みの旅行費に回したいと言われたことを順番に話した。
「それで私も腹が立ってしまってね。今まで立て替えたお金を、まず返してほしいって言ったの」
「……立て替えたお金?」
直樹の眉が寄った。
「何の話?」
尚子は息子の顔を見返した。まさか問い返されるとは思っていなかった。
「何の話って……結衣さんから何度も頼まれてたでしょう。悠斗の塾のこととか、家電を買うときとか」
「知らないよ、俺」
「え?」
「母さんから金を出してもらったって話は、毎月の生活費と新築祝いの100万円以外は知らないけど」
尚子はしばらく言葉が出なかった。家計に関わることなのだから、当然、直樹にも伝わっているものと思っていた。
