<前編のあらすじ>
夫を亡くし、息子・直樹との同居を始めた尚子。毎月の生活費に加え自身の出費も負担しているのにも関わらず、嫁・結衣から家電や学校関係の費用を「立て替えてほしい」と頼まれるようになる。
結衣は「あとで返す」と言いながら、返済せず次々と立替のお願いをしてくる。息子夫婦との関係をこじらせたくない尚子は、直樹には相談せず、結衣から必要なことは伝わっているだろうと考えていた。
そんな中、尚子が自身の車の買い替えを検討していると、「中古で十分」と口を出し、浮いたお金で家族旅行へ行こうと結衣が提案してきた。当然のように自分のお金を使おうとする結衣に不信感が募っていくのだった。
●前編【「あとで必ず返します」返済もないまま何度も金を借りる同居嫁…姑が不信感を募らせたありえない提案】
嫁姑がついに衝突
「……今、なんて言ったの?」
「え? だから、車にかけるお金を抑えて、その分で旅行に……」
「どうして私のお金を、あなたたちが使う前提で話してるの?」
自分でも思っていた以上に低い声が出た。結衣が目を見開く。
「私は別に……ただ、家族みんなで行けたらいいなって」
「同じことでしょう。私が新車を買わなければ、その分、あなたたちの旅行にお金が使える。そういう話をしているのよね?」
「それは……」
気まずそうに目をそらす結衣を前に、尚子の中で、押し込めてきた感情が一気に噴き出した。先日の塾代、その前の家電、さらに以前の立て替え。いつまでも返済されないままの金額が次々と頭に浮かんだ。
「いずれ直樹や悠斗が受け取るとしても、今は私のお金よ。何に使うかは私が決めるの。あなたに指図される筋合いはないわ」
「指図だなんて……そんなつもりはなかったんです。すみません」
「謝るならまず、今まで立て替えた分を返してちょうだい」
「え?」
「『あとで返します』って言って、まだ返していないお金があるでしょう。全部合わせたら40万円近いのよ」
結衣の顔がこわばった。
「でも……家族じゃないですか」
「家族だから何なの?」
尚子は間を置かず返した。
「私は毎月この家に生活費を入れているし、必要なものは自分で買ってる。あなたたちに養ってもらっているわけじゃない。それでも同居させてもらってるし、あなたたちが困っているならと思って、今まで何度も立て替えてきたのよ」
結衣は黙ったまま視線を落とした。
「家族だからって、約束を破っていいことにはならないでしょう。それに、私のお金を自分たちのものみたいに考えられるのは、もう我慢できない」
「……そんなつもりじゃありませんでした」
「だったら、まずは返すものを返してちょうだい。それから今後また貸してほしいと言うなら、借用書を書いてもらうことにするわ」
「そこまでするんですか?」
「もうお金の問題を曖昧にはしないわ」
そう言い切った途端、尚子の胸のつかえがとれた気がした。今までは下手に息子夫婦と揉めたくないからと口をつぐんできた。その遠慮が、結衣を増長させたのかもしれない。
尚子は、テーブルに置かれた車の広告を自分のほうへ引き寄せて立ち上がると、結衣に背を向けて自室へと向かった。
