立場が逆転した食卓
さらに由香は、用意していた「離婚協議書の控え」と「新しい生活ルール」を提示した。
「私は自分の稼いだお金で、自分のための人生を楽しむ。今日から家計の共有は家賃の折半のみ。あなたのジム代やサプリは、全部自分のお金で買って。そして、私はあなたと一緒に食事をするのを二度とやめます」
健太は呆然とした。
「何を言ってるんだ。夫婦は助け合うものだろう?」
焦りを浮かべて反論するが、由香はフッと小さく微笑んだ。
「助け合い? 私はあなたと『今日もお疲れ様』って笑顔で温かいご飯を食べたかっただけ。ささやかな日常の喜びを共有したかったの。でもあなたはそれをゴミみたいに捨てた。だったら、もう夫婦である必要さえないじゃない」
その日を境に、立場は完全に逆転した。
由香は残業帰りに、同僚とおしゃれなバルで美味しいワインと料理を楽しみ、休日は友人と人気カフェで会話に花を咲かせた。自分の収入を自分の精神的豊かさのために使う楽しさを、取り戻したのだ。
一方、毎月自分の収入から筋トレにかかる費用を捻出し始めた健太は、一気に困窮した。1人で寂しく固い鶏むね肉をかじる健太の横で、由香はデパ地下で買ってきた極上ステーキ重を味わう。健太が羨ましそうに見つめても、由香はあの日健太に言われた言葉をそのまま返した。
「あげないよ。高脂質だから、健太くんの筋肉の邪魔になっちゃうでしょ?」
