7-9月期「民間最終消費支出」の足を引っ張るゲタ
7-9月期の「民間最終消費支出」を予想する際に参考になるのが、日本銀行の「消費活動指数」です。図表4はその中の「実質非耐久財指数」のグラフです。これを見ると4月の指数がかなり増加していることが分かります。自動車税の「環境性能割」が3月末で廃止となり自動車販売が増加したことなどが背景ですが、その反動が7-9月期に出る可能性があります。
ポイントは「ゲタ」です。図表4に示したとおり、2026年6月の指数は114.8と、5月に比べマイナス5.2%の減少となりました。仮に、7月以降、前月比ゼロ%で横ばいになったとすると、7-9月期の指数は6月と同じ114.8になりますので、4-6月期の平均値118.4に比べ、前期比マイナス3.04%の減少になります。これが「ゲタ」(ベース効果)です。
<図表4 「消費活動指数」の7-9月期への「ゲタ」>
注:季節調整済み
出所:日本銀行、楽天証券経済研究所作成
つまり、実質非耐久財指数が7月以降減少しなくても、7-9月期の前期比はマイナス3%程度になってしまうわけで、それだけマイナスのゲタを履いていることになります。したがって、7月以降の前月比がかなり大きく伸びなければ、7-9月期の前期比がプラスに浮上するのは難しいということになります。
「消費活動指数」全体で見てもマイナス0.8%程度のゲタを履いていますので、7-9月期の「民間最終消費支出」がプラスになるのは微妙な情勢といえそうです。
こうしたテクニカルな話もさることながら、もっと重要なのは、図表5に示したとおり、名目の消費は伸びていても、現下の物価高によって実質的な消費が抑制され続けているという点です。ちなみに、2026年4-6月期の「民間最終消費支出」を名目で見ると、前期比1.0%、前年比3.8%の増加となっています。
<図表5 民間最終消費支出の推移>
注:シャドーは景気後退期
出所:内閣府、楽天証券経済研究所作成
「民間住宅」と「民間企業設備」は物価(デフレーター)高騰が抑制
「民間最終消費支出」「民間住宅」「民間企業設備」はともに実質GDPの需要項目ですから、いうまでもなく物価の変動を割り引いた実質値です。算出方法はともかく、それら需要項目を割り引いている物価はそれぞれのデフレーターと解釈できますので、それらが高止まりしていることが実質値を押し下げているとみることが可能です(図表6)。
<図表6 実質GDP需要項目のデフレーター>
注:シャドーは景気後退期
出所:内閣府、楽天証券経済研究所作成
特に、民間企業設備デフレーターの伸びが4-6月期は加速しており、こうした傾向が7-9月期も変わらなければ、「民間住宅」や「民間企業設備」の7-9月期がプラスに転じるのは相当ハードルが高いとみておくべきでしょう。
なお、4-6月期に国内需要を大幅に押し下げた「公的在庫変動」ですが、7月以降、石油の国家備蓄がほとんど変化していないことから、同項目の7-9月期の実質GDP前期比に対する寄与度はゼロになると想定しています。
2026年7-9月期は実質GDPのマイナス成長も
以上の分析を踏まえ、2026年4-6月期の定期検診の結果は、総合判定B(経過観察)、所見は7-9月期「要注意」としました。
現時点では7-9月期の実質GDPは前期比ゼロ%を予想していますが、4-6月期に大幅減となった原油の輸入がどの程度回復するか(輸入が2026年1-3月期の水準まで回復すれば、7-9月期の輸入は図表3の2.0%ではなく3.0%になる計算です)、7月の消費の出来や8月の酷暑・災害の影響次第では、マイナス成長に陥る可能性は十分あります。
日本経済は、hypertension(医学用語では高血圧症)の可能性が高く、まだ自覚症状は強くありませんが、2期連続で消費がマイナスになるようなことになれば、財政金融政策に対する国民の不信感が高まる可能性があります。インフレと景気鈍化が併存する中で、政府日銀による政策のかじ取りはますます難しくなると予想されます。
