8月17日に内閣府が発表した2026年4-6月期のGDPの中身を見ることによって、日本経済の状況や疾病リスクについて整理します。筆者の総合判定はB(経過観察)。実質GDPはプラス成長でしたが、中身が良くない。7-9月期はマイナス成長になる可能性もあります。
※本稿は、8月26日に「トウシル」に掲載された人気エコノミスト愛宕伸康氏の記事「GDPによる日本経済の定期健康診断~2026年7-9月期「要注意」」を抜粋・編集しています。
2026年4-6月期実質GDPは前期比年率1.1%とほぼ実力並みのプラス成長
8月17日に2026年4-6月期のGDP(1次速報)が内閣府から発表されましたので、以降では日本経済の定期健康診断と称し、その中身を見ることによって日本経済の状況、疾病リスクや先行きについて整理してみたいと思います。
まずは総合判定から。A異常なし、B経過観察、C要再検査とすると、Bと判定しました。全体の指標としては悪くありませんが、中身がちょっと…。
というわけで、中身は後ほど見るとして、最初に4-6月期の実質GDPから整理しますと、前期比0.3%増、前期比年率1.1%増、前年比0.7%増となりました。前期比のプラス成長は3四半期連続、前年比プラス成長は8四半期連続になります。
問題は、これが日本経済にとって強いのか、弱いのか。基準は潜在成長率(現存する設備や人員を前提に実現可能な成長率)です(図表1)。それを上回る成長は需給バランスをタイト化させインフレ圧力が発生する一方、それを下回る成長だと需給バランスが悪化しデフレ圧力が発生します。
<図表1 実質GDPの前期比と潜在成長率>
注:シャドーは景気後退期
出所:内閣府、楽天証券経済研究所作成
内閣府が推計する潜在成長率を見ると、2025年以降、前期比年率0.4%、前期比0.1%となっています(図表1の赤線)。
図には2000年以降の実質GDP前期比の平均値(0.2%)も点線で掲載していますが、実質GDPの変動が供給サイドから推計された潜在成長率に制約されると考えれば、実質GDP成長率の平均値が潜在成長率と似た数字になるのは自然なことといえます。
図から分かるとおり、2026年4-6月期の実質GDP前期比0.3%は、2000年以降の平均値と潜在成長率に近い、ほぼ実力どおりの成長率とみることができます。
では、前年比ではどうでしょうか。潜在成長率の前年比は日本銀行が推計していますので、それと実質GDPの前年比を比較してみました(図表2)。
<図表2 実質GDPの前年比と潜在成長率>
注:潜在成長率は日本銀行の推計する半期データを四半期に分解したもの。シャドーは景気後退期
出所:内閣府、日本銀行、楽天証券経済研究所作成
やはり、前年比で見ても2026年4-6月期の0.7%は潜在成長率とほぼ同じであり、日本経済の実力から特に違和感のない伸びであることが分かります。
内需低迷をかりそめの外需が下支え、所見は7-9月期「要注意」
このように、実質GDP成長率が日本経済の実力どおりなのにもかかわらず、なぜ総合判定がBの経過観察なのでしょうか。問題は中身です(図表3)。
<図表3 4-6月期実質GDPの中身と7-9月期の見通し>
注:純輸出は財貨・サービスの純輸出、GDPギャップは内閣府ベース。GDPギャップの年度値は当該年度の平均値。ドル円相場は18時時点の期末値。年度の<>はゲタ。
出所:内閣府、日本銀行、総務省、厚生労働省、楽天証券経済研究所作成
4-6月期実質GDPの前期比0.3%は、外需の寄与度0.5%ポイントが内需の寄与度マイナス0.2%ポイントをカバーした結果であり、図表3に示したとおり(赤い囲み)、内需を構成する「民間最終消費支出」「民間住宅」「民間企業設備」はいずれも前期比マイナスと低迷しました。
ちなみに、図表3には示していませんが、「公的在庫変動」も石油の国家備蓄が急減した影響から0.5%ポイントのマイナス寄与となっています。
寄与度が0.5%の外需に関しても、ホルムズ海峡の事実上の封鎖による原油輸入の急減などで、GDPの控除項目である輸入がマイナス1.5%の大幅減となったことが主因であり、輸出増に支えられたものと言えるほどポジティブな結果ではありません。
こうした需要項目のそれぞれの背景は、7-9月期がどうなるかにも大きく影響します。図表3には2026年7-9月期、2026年度と2027年度の筆者の見通しも掲載していますが、7-9月期は内外需とも低迷し、実質GDPは前期比0.0%と弱くなるとみています。以降で中身を順に見ていきましょう。
