割安に見える株価で注意したい3つの指標

日本製鉄の株価は、USスチール買収への不安から弱含む局面がありましたが、業績上方修正を受けて持ち直しています。

現時点のPERは12.6倍、PBRは0.65倍で、表面的には割安感があります。

もっとも、巨額投資を控える企業をPERやPBRだけで評価するのは危険です。

設備投資では、支出した現金が直ちに全額費用になるわけではありません。

損益計算書では減価償却を通じて徐々に費用化されるため、大規模投資の初期には会計上の利益が実際の資金余力より高く見えることがあります。

そこで重視したいのが、次の3点です。

•フリーキャッシュフロー:USスチールの買収と設備投資により、2026年3月期は2兆円を超えるマイナスとなっています。いつ黒字へ戻るのかが最重要です。

•ROIC(投下資本利益率):直近では3.7%まで低下しています。投下資本に見合う利益を生み出せるかを継続的に確認する必要があります。

•財務余力と株主還元:投資負担が続く間、負債水準や配当方針に無理がないかも見逃せません。利益の増加が現金創出につながっているかが重要です。

海外進出は必要だったが、成功が約束されたわけではない

日本国内の鉄鋼需要が縮小し、中国をはじめとする海外勢が大量生産を続けるなか、日本製鉄にとって海外展開は避けて通れない成長戦略でした。

大きな需要があり、保護主義によって国内生産が守られやすい米国で生産基盤を持つことには明確な戦略的意義があります。

その一方で、成長のために必要な投資であることと、投資家に十分なリターンをもたらすことは別問題です。

鉄鋼業は景気と市況の影響を強く受け、好況期には大きな利益が出る一方、需要が落ち込むと収益が急速に悪化します。

長期の株価も上昇と下落を繰り返してきました。

したがって、日本製鉄を評価する際は、足元の利益だけでなく、好況が一巡した後にも稼げる体質へ変わっているかを見る必要があります。

経営力は期待材料

期待材料として挙げられるのが、日本製鉄の経営改革力です。

2020年のコロナショック後、同社は生産設備の再編やコスト構造の見直しを進め、収益力を改善させました。

株価も安値から大きく回復しています。

この改革を主導した橋本英二氏がUSスチール買収を決断したことは、一定の安心材料といえます。

ただし、国内で成功した改革を、商慣行や労働環境が異なる米国でも再現できるかは未知数です。

経営陣への期待だけで投資判断を完結させず、四半期ごとの進捗を数字で確認する姿勢が求められます。

日本製鉄への投資で確認したいポイント

日本製鉄への投資を検討するなら、①米国の鋼材価格と関税政策、②データセンターや製造業の建設需要、③USスチールの生産性・品質改善、④設備投資額とフリーキャッシュフロー、⑤ROICの回復、という5点を追うとよいでしょう。

足元のUSスチールは、日本製鉄の業績を支えるほどの利益を生み出しています。

しかし、その多くは米国市況の追い風によるもので、買収後の改革が完成したことを意味しません。

結論として、USスチール買収は日本製鉄の成長に必要な一手であり、現時点では良いスタートを切っています。

一方で、巨額投資の回収には長い時間がかかり、政策・市況・現場改革という複数の不確実性を抱えています。

PBRの低さだけで「割安」と判断するのではなく、キャッシュフローと資本効率の改善を確認しながら評価することが、長期投資家にとって最も重要です。

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【日本製鉄】USスチールがまさかの絶好調!2兆円買収は成功だったのか?
 

※本記事は金融教育を目的としたもので、投資を推奨するものではありません。実際の投資には一定のリスクがともないます。投資判断は個人の責任で行ってください。