倹約家の夫が知った事実

「これは何だ?」

夕方、芽以が洗濯物を取り込んでいると、キッチンから聡の声がした。彼の手には、まとめて袋に入れておいた大量の出前容器があった。

「あ、それは……」

返事をする前に、颯太が答えた。

「出前のごみだよ。親子丼もオムライスもおいしかったし、また頼みたい」

「出前? そんなに何度も頼んでるのか」

「うん。夏休みになってから毎日頼んでるよ」

「ちょっと、颯太……」

聡はリビングへ戻ると、険しい顔で芽以に尋ねた。

「毎日出前を取るなんて何を考えてる? いくら使ったんだ?」

「別にいいでしょ。作る手間を省くためよ」

「午前中は家にいるんだし、昼食を作るくらいの時間はあるんじゃないのか?」

「在宅でも仕事はしてるし、昼からはスーパーにも行ってる。家にいるからって暇なわけじゃないの」

芽以は颯太を自室へ行かせてから、改めて聡と向き合った。

料理そのものが嫌いなのに、自分だけが毎日献立を考えて作っているのが当然とされるのは納得できなかった。

「でも、颯太もいるんだぞ。かわいそうだと思わないのか」

「颯太は喜んでるわよ」

「だからって、子どもに毎日出前を食べさせるなんて無責任だろ」

「夕食はちゃんと用意してるし、お昼くらい好きにしていいでしょ。作ってもいないあなたが、口出さないでくれる?」

聡の顔がさらに険しくなる。

「結局は自分が楽するためだろ。そんなの母親失格だ」

思いがけず鋭い言葉が胸に突き刺さった。料理を作るかどうかだけで、自分の価値を決めつけられたようで悔しかった。

芽以はそれ以上聡と会話をする気になれず、畳み終えた洗濯物を持って立ち上がった。そして、何も言わず彼に背を向け、寝室へと向かった。