昼食作りからの解放
夏休み初日、芽以は仕事部屋からリビングへ顔を出した。颯太はソファで宿題の冊子を開いていたが、鉛筆は止まったままだった。
「お昼、何がいい?」
「どうせそうめんでしょ?」
「今日は出前にしようかと思って」
そう言った途端、颯太は弾かれたように顔を上げた。
「本当に? 何でもいいの?」
「いいよ。この中から選んで」
2人でスマートフォンをのぞき込み、カレーを選んだ。
翌日は親子丼、その次はオムライス。家にいながら毎日違う店の料理を食べられる生活を、颯太はすっかり気に入った。
「明日は何にする?」
「まだ今日の食べてるでしょう」
芽以も笑いながら答えた。
昼食作りも、洗い物もせずに済むだけで、午後のパートへ向かうまでの時間に余裕ができた。午前中にイラストの仕事が入った日も、時計を気にして作業を切り上げる必要がない。もちろん毎日頼むとなるとそれなりにお金がかかる。それでも、料理にかかる時間と気力を買っていると思えば、芽以には納得できる出費だった。何より颯太が喜んでいることもあり、数日経つころには、後ろめたさも薄れていた。
