午前10時過ぎ、芽以は仕事部屋の机で、広告用イラストの色彩調整をしていた。
イラストレーターとは名ばかりで、依頼が続いたかと思えば、ぱたりと途切れる月もある。そのため芽以は不安定な収入を補う形で、昼から夕方まで、近所のスーパーでパートをしていた。今日も昼食を済ませたら、制服に着替えて出勤する予定だった。
在宅ワーカーの食事事情
「ふう……おなかすいた」
正午前、区切りのいいところでデータを保存し、芽以は冷凍パスタを電子レンジに入れた。湯を注いだインスタントスープを添えれば、いつもの昼食の完成だ。
料理ができないわけではない。煮物も炒め物も、作ろうと思えば人並みに作れる。実際に家族全員分の夕食はほとんど毎日作っている。ただ、献立を考え、材料をそろえ、調理し、洗い物までするという一連の作業が、どうにも好きになれなかった。
「ごちそうさまでした」
食事を終えて立ち上がると、冷蔵庫に貼ったプリントが目に入った。小学4年生の息子・颯太が前日に持ち帰ったものだ。何気なく視線を向けた芽以は、「夏休みの生活」という見出しにため息をついた。
「もう来週からか……」
夏休みになれば、颯太は毎日家にいる。自分だけなら冷凍食品で済ませられるが、育ち盛りの10歳児に毎日同じようなものを出すのも気が引ける。午前中の仕事を中断して昼食を作り、片づけてからパートへ向かう日々を想像すると、気が重くなった。
