「解釈の余地」に注意
数週間後、吾郎さんからメールで「遺言書通りの内容で進めてください」という短い連絡が来た。おそらく弁護士に相談した結果、自分の主張を通すのは難しいと分かったのだろう。
こうして、最終的には啓介さんの遺言書通り翔太さんには400万円の遺贈がなされる方向で手続きが進んだ。
このように、条件付きの遺言書は、親族間の争いの種になりやすい。
特に、解釈の余地がある場合には注意が必要だ。今回の事例で言えば、「大学へ進学することを条件に」という表現が、現在の状況と異なるため、利害関係者に解釈の余地を与えてしまった。
もし、争いの余地を無くしたいのであれば、「遺言者の死亡時までに翔太が大学へ進学している場合、または死亡後に大学へ進学した場合には、翔太に400万円を遺贈する」と、詳しく想定した文章にしてもよかったのかもしれない。
遺言書は、本人が生きている間に読まれるものではない。
本人が亡くなってから、遺産について利害関係を有する残された人たちによって読まれることになる。
その過程で、相続人たちが、文言のちょっとした隙を探すことは珍しくはない。その文言によって昔から気に入らなかった人に財産が渡るとあれば、なおさら目を皿のようにして探すことになる。
だからこそ、遺言書に条件を付ける場合には、死亡時点で既に条件が満たされていた場合も想定し、だれがいつ読んでも明確な文面で記載しなければならない。
遺言書の一文は、残された人の人生を動かす。
読者諸兄にはもし、遺言書と関わることがあれば、重々、そのことについて理解し、向き合っていただきたい。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
