胸の痛む母への報告
電話をかけると、母はすぐに出た。
「沙枝子?」
「お母さん、さっきのお中元の話だけど」
「うん」
「和毅が向こうのお母さんに相談してくれて、これからは、お中元もお歳暮も、お互いに送らないことになったから」
「あら、そう。吾妻さん、気を悪くされたんじゃないでしょうね」
心配そうな声で尋ねる母に、沙枝子は義母の発言を伝えないことにした。母を傷つけ、両家の対立を深めても意味はない。
「大丈夫。私たち夫婦で決めたことだから、気にしなくていいよ」
「それなら助かるわ」
そう言うと、母はほっと息をついた。
「今までは、毎回お父さんとデパートへ行って、同じくらいになるものを選んでいたの」
「そっか。ありがとうね」
「せっかく送ってくださるのに放っておけないからね」
その言葉に、沙枝子の胸が少し痛んだ。母は礼儀を欠いていたわけではない。むしろ負担を感じつつも、義母に誠実に応えようとしてくれていたのだ。
電話を切ると、和毅が言った。
「これで終わりだな」
「うん。終わり」
義母の考えが変わったわけではないし、両家の距離が縮まったわけでもない。それでも、不満を抱えながら、年に2度も贈り物をする必要はなくなった。
「沙枝子、1杯飲まない?」
「いいね」
沙枝子はスマートフォンを伏せてキッチンへ向かい、和毅と肩を並べて晩酌の準備を始めた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
