義母の侮辱が妻を襲う

「先に送ってほしいなら、そう言えばよかっただろ」

「そんなこと、こちらから言わせるなんておかしいわ。常識のある家なら、何も言わなくても自分から送るはずよ」

「母さん、それは――」

「そもそも、福田さんには親同士できちんと付き合う気があるのかしら。お中元もお歳暮も、届いてから慌てて返すだけでしょう。そんな非常識な家の娘が嫁いできたのかと思うと、情けないわ」

一気に沙枝子の頬は熱くなった。今の言葉は、沙枝子の家族までまとめて見下している。古い考え方を持っていることよりも、それを唯一の正解として、事情も確かめずこちらを非常識扱いする態度が気に障った。

沙枝子は布巾を置き、和毅に近づいた。だが――

「母さん、それは違うだろ」

和毅の予想外に強い口調に動きを止めた。

「何が違うのよ」

「母さんが今まで、両家のために品物を選んで送ってくれてたことは分かってる。それには感謝してるよ」

和毅は声を荒らげることなく、静かに続けた。

「でも、母さんの常識が、どこの家にも通じる常識とは限らないだろ」

「何を言ってるの。嫁に出した側が礼を尽くすのは当然でしょう」

「そういう考え方があるのは分かるよ。でも、俺も沙枝子も、向こうの家もそうは思ってない」

「だからそれは、あの人たちの常識が……」

「母さんから届いたものを無視したことはないんだろ。毎回きちんと返してくれてた」

沙枝子は黙って和毅の横顔を見つめた。一瞬、和毅が母親の機嫌を損ねないよう、曖昧なところで話を収めるのではないかと思った。だが和毅は、義母をなだめるために言葉を濁そうとはしなかった。

「ただ返せばいいってものじゃないって言ってるでしょう」

「先に送らなかっただけで、礼儀知らずとか非常識とか言う方がおかしいよ」

電話の向こうで、義母が息をのむ気配がした。

「そもそも俺と沙枝子は、対等な関係だよ。結婚したからって吾妻家が上で福田家が下になるわけじゃない。昔と今は違うんだよ」

胸の奥に湧き上がってきた怒りが、少しずつ冷めていく。和毅は沙枝子をかばうためだけに、母親へ言い返しているのではなかった。贈り物を使って家同士に上下をつける考えそのものに、納得していないのだ。