近所のスーパーで買い出しを終えた周吾は我が家の玄関を開いた。家の中はしんと静まりかえり、周吾も黙ったまま靴を脱いで家に上がった。

半年前に妻の幸代が亡くなってから、周吾の周りからは人の声がほとんどしなくなった。

妻を失った男の静かな老後

周吾は買い物袋を台所の床に置いた。中に入っているのは、半額シールが貼られた弁当、カップ麺、食パンと安い焼酎の小瓶だった。

野菜もちゃんと食べないとダメだと幸代に注意されていたことをふと思い出したが、今さら健康を気にしても仕方ないと思った。

買い物袋にはレシートが入っていたのでそれをゴミ箱に捨て、周吾は弁当をレンジで温めて昼ご飯を食べた。

年金は月に13万ほど。それが周吾の全収入だ。

ローンも払い終えた持ち家なので家賃はかからないが、光熱費や食費、慢性的な腰痛の通院費などの出費がある。なけなしの貯金は幸代の葬儀などでほとんど使い果たしてしまったので、ぜいたくはできない。とはいえ、ぜいたくをする気もない。今はセカンドライフだなんだと、ぜいたくな余生を送る人もいるそうだが、幸代がいない今、そんな気力は湧かなかった。

だから家計の管理もしていない。腹が減れば食い、金がなければ食えない。まるで檻のなかで飼育される動物みたいな生活だ。いや、自分で餌を買いに行けるあたり、飼育動物よりはいくらか自由でましなのだろうか。

周吾はスーパーの弁当を食べながら幸代の料理が恋しくなったが、まともに料理をしたことのない周吾に再現などできるわけもなかった。