-
要旨
〇2026年4-6月期法人企業景気予測調査によると、2026年度の全産業の売上高は上方修正となっている。一方で、経常利益はコスト負担増や世界経済の不透明感から全産業で▲2.4%と減益率が拡大しており、非製造業も増益から減益に転じる計画。7月下旬からの決算発表では多くの業種で減益計画が予想されるため、増益計画を打ち出せる業種に注目が集まるとみられる。
〇売上高見通しでは多くの業種が増収計画となる中、前回調査からの上方修正率が高いのは「非鉄金属」「農林水産」「電気・ガス・水道」「石油・石炭製品」「生産用機械」。共通要因として、イラン情勢緊迫化に伴う鉱物性燃料価格の上昇による価格転嫁が挙げられる。特に「非鉄金属」は半導体関連材料を中心とした高機能品の需要拡大、「生産用機械」はデータセンターや車載向け、防衛・エネルギー関連などの需要増加が寄与していると推察。
〇経常利益見通しでは企業の慎重な見方やコスト増懸念から、多くの業種が減益計画となっているが、「職業紹介・労働者派遣」「鉱・採石・砂利採取」「化学」「電気・ガス・水道」「生産用機械」の5業種は2桁を大きく上回る高い上方修正率を記録。3桁の大幅上方修正となった「職業紹介・労働者派遣」は、人手不足による労働市場の流動化と堅調な需要が背景にある。「電気・ガス」や「生産用機械」は原発再稼働や生成AI向けなどの強い需要に支えられており、「化学」は原油価格上昇に伴う石油精製・販売・開発の利益計画上方修正が予想される。
1.売上高上方修正も経常利益下方修正
6月11日に公表された2026年4-6月期法人企業景気予測調査(内閣府、財務省)は、今年5月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、来期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。
そこで本稿では、今年7月下旬からの今年度決算発表において、来年度の企業業績計画の好調さが見込まれる業種を予想してみたい。
図表1は、本調査のうち全規模・全産業の各調査時期における売上高と経常利益計画の年度見通しを見たものである。まず売上高を見ると、26年度は増収率が上方修正となっている。このことから、決算でも今期の売上高計画が強い業種には注目が集まるものと推察される。
一方、経常利益は全産業で26年度は▲2.4%と前回調査から減益率が拡大となっているが、コスト負担増や世界経済の先行き不透明感等が影響してか、非製造業については増益から減益に転じる計画となっている。このことから、7月下旬からの決算発表では、多くの業種で来年度減益計画が出てくることが予想される中、増益計画が打ち出される業種には注目が集まるものと推察される。
2.売上高大幅上方修正の「非鉄金属」「農林水産」「電気・ガス・水道」
以下では、7月下旬からの決算で、来季売上高計画で高い増収率が期待される業種を見通してみたい。図表2は26年度の業種別売上高計画(全規模)と、前回調査からの修正率を比較したものである。
結果を見ると、26年度は「鉱・採石、砂利採取」「娯楽」以外の業種で増収計画となっている中で、特に前回調査から上方修正率が高い業種は「非鉄金属」「農林水産」「電気・ガス・水道」「石油・石炭製品」「生産用機械」となっている。
まず、全ての業種に共通して言えることは、イラン情勢緊迫化に伴い鉱物性燃料価格が上昇していること等からすれば、価格転嫁に伴う製品価格上昇等が増収計画に寄与していることが推察される。
こうした中で、特に「非鉄金属」については、原油価格上昇に加え、半導体関連材料を中心とした高機能品の需要拡大に伴う価格転嫁が見込まれていることが予想される。
また、「生産用機械」については、データセンターや車載向けを中心とした電子部品や半導体製造装置需要の拡大に加え、ITサービスや防衛・エネルギー関連に対するさらなる需要の増加が期待されていることが推察される。
3.経常利益大幅上方修正の「職業紹介・労働者派遣」「鉱・採石・砂利採取」「化学」
続いて、経常利益計画から上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは年度明け前の企業の慎重な見通しや諸々のコスト増懸念が主因と推察される(図表3)。
こうした中、上方修正率が高い業種は「職業紹介・労働者派遣」「鉱・採石・砂利採取」「化学」「電気・ガス・水道」「生産用機械」であり、いずれも2桁を大きく上回る上方修正率となっている。
まず、大幅増収計画の「職業紹介・労働者派遣」も3桁の大幅上方修正率となっている。こちらは、人手不足の中で労働市場の流動性が高まっていること等から、堅調な需要を受けて強気な計画になった可能性がある。
また、「電気・ガス」や「生産用機械」については、原発再稼働に加え、生成AI向けなどの強い需要などにより価格転嫁が進んでいること等が上方修正の要因となっていることが推察される。一方の「化学」については、原油価格の上昇に基づき、石油精製や販売、開発の利益計画が上方修正されたことが予想される。
なお、日銀が7月2日に公表する6月短観の業種別収益計画(大企業)は、法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、6月短観における大企業の収益計画も期末決算と来期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
全産業で減益率拡大のなか、「増益」を打ち出す業種はどこか――法人企業景気予測調査で読む26年度業績見通し
国内外を覆う不確実性によって景気や市場を見通すことは困難を極めています。そこで国内屈指の著名エコノミストである、第一ライフ資産運用経済研究所の経済調査部で首席エコノミストの永濱利廣氏に、経済・市場の今後を読み解く手がかりになるテーマについて解説していただきました。※本稿は、6月11日掲載の第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト、永濱 利廣氏のレポート「法人企業景気予測調査から見た26年度業績見通し~「職業紹介・労働者派遣」「鉱・採石・砂利採取」「化学」で利益大幅上方修正~」を抜粋・再編集したものです。
おすすめ記事